メリットを受ける業界や利用者に偏りがあり、人の移動を促進して感染を広げる「Go To トラベル」はそもそも経済政策として筋が悪いし、これまで政府に気を遣った発言の多かった尾身氏が見直しを進言するくらいなので、「Go To」をせめて一時中止すべきではないかと筆者は思う。
しかし、皮肉を込めて言うと、コロナをばらまく一方で、経済は止めないと言っているのだから、こと株価に関してだけは、「Go To」は強力な支援材料である。
投資家としては、日本国内の状況に加えて「日本の親会社」のような存在であるアメリカの状況をつねに気にかける必要があるが、ジャネット・イエレン氏を財務長官に起用するバイデン次期政権の布陣を見るに、今後もコロナ対策のための大規模な財政支出が継続されそうで、株価をめぐる構図は変わらない。
イギリスではアメリカの大手製薬メーカー・ファイザー社のワクチン接種が始まり、そのアメリカでも接種が始まる見込みだが、社会全体としてコロナ感染の低下をもたらすには数カ月はかかりそうだ。その数カ月は、コロナ対策の財政支出とワクチンによる経済回復の期待が同居するので、これまた株価にとって追い風となりやすい状況と言えよう。
ついに日本の筆頭株主が交代した
ところで、報道によると、11月にわが国最大の株式の保有主体が、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)から日銀に交代したようだ。一時よりも買うペースを落としているとはいえ、「買い」一方の日銀に対して、GPIFは株価の値上がりで国内株式比率が基本ポートフォリオの比率(25%)から上方乖離したことから、保有株式の一部を売却したので、「日本の筆頭株主」交代が少々早まったらしい。
GPIFが株式を一部売却したとすると、これは年金基金としては普通の行動で、今回は「余裕のリバランス」と言えそうだ。一方、日銀は当面利益になっているのだから結果オーライ的な面があるとはいえ、「出口」の方法が見えない株式ポジションを積み上げている点に不安がある。日銀が民間企業の大株主になる状況は、利益相反の点でも(銀行も上場会社だ)、企業のガバナンスの面でも好ましくない。
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