Uberが後発なのに世界一になれた経営学的理由 大企業が万能だった時代は終焉を迎えつつある

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別の例もご紹介しましょう。「大企業モデル」が生み出された産業革命以後、さらなる技術進化により、小規模でも低コスト・高効率を実現できるようになり、分散して手元にある小規模設備の利用が増えました。

さらに、デジタル化により分散している資源を安価につなぐことも可能になりました。その結果、以前は不可能だった「小規模分散資源の組織化」が可能になりました。その一例が先のウィキペディアであり、最近ではUberやAirbnbです。

重要なことは「大企業による大規模先行投資」という勝ちパターンが崩れたことです。Uberは世界最大のタクシー会社、Airbnbは世界最大のホテル会社です。でも、それぞれタクシーや部屋を自社では所有していません。資源をもたない後発の小企業が、分散小資源を組織化して先発大企業を倒すことが可能になりました。ビジネスの可能性が広がったのです。

2000年代初頭、ウィキペディアが既存の百科事典を凌駕したときに「同じことが我が業界でも起きるかもしれない」と気がついたタクシー会社やホテル会社があったでしょうか? 人間の想像力がいかに貧困であるかという事例ともいえます。

「他業界だから関係ない」では済まされません。むしろ異業種で起こっていることにイノベーションの示唆があるはずです。

ビジネスの可能性が大きく広がっています(KADOKAWA提供)

企業戦略の根本原則が変わる

200~300年に1度起きるか起きないかというパラダイムシフト(大きな価値観の転換)が起こりつつあるという見方もありますが、現時点では定かではありません。これは、教科書的な答えのないテーマです。まさに皆さん一人ひとりが考えるべきことです。

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これまで述べてきたような、「資本主義自体に大きな見直しがなされるなどありえない」と思うかもしれません。でも、実は資本主義にしても、たかだか200~300年前に確立した新しいパラダイムで、それ以前は、ほぼ正反対のパラダイムのもとで社会・経済が機能していたのです。

資本主義以前は、小規模分散の小さな村単位での自給自足型経済で、自分で生産して自分で消費する形がむしろ普通でした。財産の多くは共有財産で、私有財産という概念は希薄でしたから、村の都合を無視して自己利益を追求するのは「悪」であり、これに反した人は村八分という制裁を受けたのです。

それからすれば、ここでもう1度パラダイムシフトが起きてもおかしくはありません。そうなれば、企業戦略の根本原則が変わるでしょう。どのような方向で変わっていくのかは、定かでありませんが、うまく対応すれば大きなチャンスになるでしょう。逆に、過去の成功にしがみつく企業にとっては脅威にもなりますが……。このことは、ぜひ皆さん自身が考え続けてください。

菅野 寛 早稲田大学ビジネススクール教授

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かんの ひろし / Hiroshi Kanno

早稲田大学大学院経営管理研究科(早稲田大学ビジネススクール)教授。東京工業大学工学部卒。同大学院修士課程修了。米国カーネギーメロン大学にて経営工学修士取得。その後、ボストン コンサルティング グループ(BCG)にて十数年間、日本およびグローバル企業に対してさまざまなコンサルティング・サービスを提供。BCGテクノロジー、メディアおよびテレコミュニケーション専門部会のアジア/パシフィック地区リーダーを経て、2008年より一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授。2016年より現職。

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