2ちゃん創設者が分析「炎上を起こす人」の生態 ネットには「金はないが時間はある」暇人が多い

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要するに、今のネットには「お金はないけれど時間は余っている」という暇人があふれているのでしょう。2017年に、金融広報中央委員会が行った調査では、かなり衝撃的な結果が出ました。日本全国の20歳以上で、かつ2人以上で暮らす8000世帯を対象に調べたところ、金融資産がゼロの世帯が31.2%を占め、しかも、収入がない世帯が60.7%もあったそうです。

気ままな1人暮らしではないのに、これほど貧乏。となれば、ほとんどお金のかからないネットに娯楽を求めるしかないのでしょう。お金がある人は、もっと楽しいリアルな趣味を持っていて、ネットの炎上騒動になど参加している暇はありません。

一方、時間はあるけれど、その時間を有意義に過ごすためのお金がないと、ひたすら、ネットで関係のない人を攻撃して憂さを晴らしたくなるのかもしれません。そういう一部の人たちが、自分で自分の怒りに火をつけ、狂ったように暴れているのが炎上現場です。

「人の幸福」は「自分の不幸」

ネット炎上がここまで頻繁に起こるのは、日本人の「国民性」にも原因があるのではないかと思います。統計数理研究所が1953年から5年ごとに行っている「日本人の国民性調査」というものがあります。その名のとおり、日本人の国民性の変化について長く分析を続けています。

アンケート形式のいくつかの設問の中で、毎回行われている「あなたは、自分が正しいと思えば世のしきたりに反しても、それをおし通すべきだと思いますか、それとも世間のしきたりに、従った方が間違いないと思いますか?」というものへの答えを見ると、日本人特有の気質が見えてきます。「おし通せ」と答える人の割合はどんどん減っているのに対し、「従え」は、毎回ほぼ変化することなく4割弱を占めています。

法律上は昔より個人の権利が拡大し、それなりに自由度が高くなっているはずなのに、集団の中での「空気を読む態度」のようなものは、より厳しく求められているのかもしれません。

もう1つ、データを紹介しましょう。国連の関連団体が行っている「世界幸福度報告書」の2019年版によると、幸福度が高いのは1位フィンランド、2位デンマーク、3位ノルウェーと北欧諸国が占め、日本は156か国中58位でした。ちなみに、アメリカは19位、韓国は日本より上の54位です。

この幸福度の判定は、以下の6つの要素を分析した結果からなされます。1人あたりの国内総生産・社会的支援の充実ぶり・健康寿命・人生の選択の自由度・寛容さ・社会の腐敗の少なさ。この中で日本は、健康寿命は2位と健闘しているのですが、人生の選択の自由度は64位、寛容さは92位と非常に低くなっています。

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