中国外相来日「国名なき共同声明」となったわけ

中国政府の対日接近はいつまでも続かない

11月に来日した中国の王毅外相(左)と菅義偉首相(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

トランプ大統領のアメリカを例外とすれば、ほとんどの国が中国との付き合い方に神経を使う。一筋縄ではいかない中国相手に硬軟織り交ぜて対応し、余計な摩擦を避けつつ国益を実現しようとしているためで、もちろん日本も例外ではない。

コロナウイルスの感染拡大が深刻化する11月24日、中国の王毅外相が来日し、菅義偉首相や茂木敏充外相と会談した。外務省のホームページを見ると、外相会談の内容は「日中両国が共に責任ある大国として、地域・国際社会の諸課題に取り組み、貢献していくことが日中関係の更なる強化につながることを確認した」などと紹介されている。そして、日中間のビジネスパースンの往来再開や東京五輪成功への協力などで合意した。

懸案の尖閣諸島問題については、茂木外相が「我が国の懸念を伝達し、海洋・安全保障分野について、中国側の前向きな行動を強く求めた」とだけ紹介されており、王毅外相の回答は記されていない。これだけを見ると極めて友好的な雰囲気の会談だったように読めるが、実態はそれほど単純ではない。

日豪会談は国名をぼかして非難

王毅外相来日の1週間前の11月17日、オーストラリアのスコット・モリソン首相が来日して菅首相と会談した。その際に公表された日豪首脳共同声明の内容は、日中外相会談とはかなり雰囲気が異なる。

まず、中国が次々とサンゴ礁を埋め立てて軍事基地化している南シナ海について、少々長いが次のように記している。

「両首脳は、南シナ海における状況に関する深刻な懸念を表明し、現状を変更し、よって地域における緊張を高めるいかなる威圧的な又は一方的な試みに対する強い反対を再確認した。両首脳は、また、係争のある地形の継続的な軍事化、沿岸警備船及び「海上民兵」の危険かつ威圧的な使用、弾道ミサイルの発射、並びに他国の資源開発活動を妨害する試み等を含む、南シナ海における最近の否定的な動き及び深刻な事案に関する深刻な懸念を共有した」

「海上民兵」や「弾道ミサイル」など、非常に具体的に、かつ強い非難のトーンとなっている。上記の引用部分は、南シナ海について書かれている部分の3分の1にすぎず、この先も延々と南シナ海問題が続く。そして、別の項目で東シナ海や香港をめぐる状況への「重大な懸念」なども列挙されている。

いずれも中国を非難していることは言うまでもないのだが、よく読むと共同声明には「中国」という国名が一度も登場していない。南シナ海で起きていることは詳しく書かれているが、非難の対象国はぼかすという不思議な文章になっている。

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