中国外相来日「国名なき共同声明」となったわけ 中国政府の対日接近はいつまでも続かない

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これは外交文書では珍しくない手法だ、明らかに特定の国を非難していることは読めばわかるのだが、国名を書かないことで、必要以上の対立や摩擦を煽らないという目的が込められている。

だからといって中国政府が黙っているわけもない。直ちに「中国を理由なく非難し、乱暴に内政干渉した」(外交部)と反発した。しかし、国名が盛り込まれなかったことの意味をくみ取ったせいか、中国のその後の対応は日本とオーストラリアとで対照的だった。

経済力を使った手段で豪州に圧力

オーストラリアに対しては2日後の11月19日、駐豪中国大使館がオーストラリア政府にではなく、同国の主要メディアに14項目にわたってオーストラリアに対する非難を列挙した文書を渡した。その内容は「オーストラリアがアメリカの反中キャンペーンに加担している」など、中国がこれまで批判してきたことをまとめたもので目新しいものはなかった。

オーストラリアはもともと、貿易の4分の1が中国相手で、日本以上に中国との経済関係は深い。安全保障面では日本と同じようにアメリカとの間で同盟関係を結び、経済では中国との関係を重視してきた。政権与党が保守の自由党であろうが、左派の労働党であろうが、最近までこうした基本的枠組みに大きな変化はなかった。

ところが2018年に中国系の団体から長年にわたって与野党に多額の献金が渡されていたことや、献金を受け取った一部議員が南シナ海問題で中国寄りの発言を繰り返していたことが発覚し、中国に対する警戒感や反発が一気に広がった。ここからオーストラリアと中国の間で非難の応酬などが続き、2020年4月にオーストラリアが中国発の新型コロナについて中国政府の初期対応などに関する国際的な調査を呼びかけたことで対立が決定的となった。

そうなると例によって中国の「オーストラリアいじめ」は徹底している。オーストラリア産牛肉の輸入停止や大麦などへ高い関税をかけるなど、「エコノミック・ステイトクラフト」と呼ばれる経済力を使った手段を次々と講じ、圧力をかけ続けている。

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