新幹線0系誕生の「影の立役者」、在来線車両5選 技術の積み重ねが世界に誇る高速鉄道を生んだ

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小田急3000形SE車

1957年に登場した小田急ロマンスカー3000形SE車の開発に際して、国鉄の鉄道技術研究所が技術協力をしたほか、多くの鉄道車両メーカーが開発に参画し、数々の新技術が盛り込まれた。先頭部の形状も風洞実験で検討され曲面ガラスを採用。さらに鉄道車両で初めて前照灯にシールドビームを採用するなど、当時最先端の技術を積極的に盛り込んでいる。

小田急3000形SE車は国鉄の鉄道技術研究所の協力により、斬新なデザインと当時の最新技術が盛り込まれた特急車両となった。3000形は狭軌世界最高時速145kmを達成し、国鉄151系や新幹線0系開発の基礎データを提供した(筆者撮影)

その中でも注目したいのが、付随台車に鉄道車両で初めてディスクブレーキを採用したことだ。これは鉄道技術研究所からの強いリクエストがあり、高速運転に対するディスクブレーキの有用性を確認する目的があったと推察される。3000形は付随車用として車軸ディスクブレーキを搭載。これは国鉄の特急・急行型電車の付随車にも採用された。新幹線0系では車輪にブレーキディスクを備えた車輪ディスクブレーキを付随車だけでなく電動車にも採用した。

なお、小田急3000形は101系と共に高速度試験に使用され、当時の狭軌世界最高速度である時速145kmを達成。日本の鉄道の高速化時代の幕を切り開いたといえる。

元祖特急型電車の功績

国鉄151系

国鉄は1958年に特急型電車151系(当時はモハ20系)をデビューさせた。151系は前年に登場した101系をベースとして、高速化に対応させると同時に快適性を向上させた。

ビジネス特急「こだま」としてデビューした151系は電車の長距離高速運転を実現し「長距離=客車」という鉄道輸送のあり方を大きく転換させた。東海道新幹線開業後、151系は出力増強などの改造を受け181系となって活躍。クハ181-1が川崎重工業で保存されている(筆者撮影)

車体は側窓を固定式として冷房装置を搭載。パンタグラフも高速運転時の架線追従性を向上させている。また、付随車には小田急3000形で採用された車軸ディスクブレーキを採用した。乗り心地向上策としては空気ばね台車を採用。また、車端ダンパを設置して振動の抑制も図った。

151系は1959年に高速度試験を実施。時速163kmを達成し、狭軌世界最高速度記録を更新した。その成果は電車のさらなる高速走行の可能性を実証し、新幹線の実現を導いた。0系では空気ばね台車や車端ダンパを採用している。

このように見てみると、確かに0系は既存の技術を活かして開発されたと言えるが、0系が登場する数年前に実用化された新技術も多く活かされていることがわかる。そのすべてが新幹線の開発を見越したものというわけではないが、この時代に日本の鉄道技術が急速に進化したと見ることもできそうだ。

松沼 猛 『鉄おも!』編集長

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まつぬま たける / Takeru Matsunuma

大阪府出身。明治大学文学部卒。株式会社三栄書房に20年間在籍し、編集者として世界各地を飛び回った。2008年12月から『鉄道のテクノロジー』編集長を務めた後、2013年5月に独立。現在は『鉄おも!』編集長のほか、『鉄道ジャーナル』『ニューモデルマガジンX』『カーグッズマガジン』、鉄道、自動車関連ムックなどに執筆。

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