進む資源スタグフレーション 需要減の中、高値を更新する原油・穀物…

拡大
縮小


200ドル突破を危惧 製品値上げが相次ぐ?

暴騰シナリオも聞こえてくる。2月4日、米国政府は国家戦略石油備蓄(SPR)積み増しのため、9月末までに5億8400万ドル分の原油を購入する計画を明らかにした。1バレル=100ドルに達するなど原油価格が最高値圏にある中、あえて需給をタイトにするブッシュ米大統領には、原油価格を下げる意志が感じられない。なぜこのタイミングで積み増すのか。「ブッシュ大統領は自分が退任する前にイランに攻撃を仕掛けようとしているのではないか。そうなったら原油価格は100ドルどころではなく200ドルを突破する」と危惧するのは、石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)の石井彰首席エコノミストだ。


 
 原油価格の先高感が強まる中、企業がどのような行動をとるのか分析したのは三菱UFJリサーチ&コンサルティングの芥田知至主任研究員。表を見ていただきたい。日本の製造業が原油高などのコスト増をどのように吸収したか、過去2回の石油危機と最近を比較している。
 
 第1次石油危機のとき、原料高はその大半をトイレットペーパー等の販売価格の値上げで吸収した。だが02~05年度は原料コスト増の多くを売り上げ数量増によって吸収、値上げはわずかだった。ところが、03~06年度にかけては売り上げの数量増効果が減少、値上げ効果が倍以上に膨らんだ。
 
 07年度、08年度は一段の輸出鈍化が見込まれており、数量増効果は限定的。原料価格は一段と上昇し、原料高によるコスト負担はますます増加する。いきおい値上げ頼みになってくる可能性が高く、需要が減退する中での物価上昇圧力が強まることが予想される。

豪州大干ばつで小麦高騰 在庫減少で一段高も

原油とともに消費者の懐を痛めつけているのが穀物価格の高騰だ。大豆と小麦が連日のように過去最高値を更新。トウモロコシも過去最高値に迫りつつある。大豆価格の上昇は、みそ、しょうゆ、豆腐等の価格の引き上げ要因となる。小麦の価格上昇はパン、麺、菓子類などの値上げにつながる。


 
 国内消費の9割を輸入に頼る小麦は政府が一手に輸入しており、小麦価格は事実上、政府が決めている。その輸入小麦価格が4月から30%引き上げられることが2月15日、農林水産省から発表された。
 
 パン最大手の山崎製パンは、昨年12月に24年ぶりに食パンを値上げしたばかり。即席麺最大手の日清食品も、今年1月に17年ぶりに即席麺を値上げしたばかり。いずれも再値上げが必要な状況に追い込まれる。
 
 小麦価格高騰の最大の理由は、豪州が2年続けて大干ばつに見舞われたことにある。例年2000万トン前後の生産量がある豪州は前06/07年度(06年6月1日~07年5月31日)に990万トン、今07/08年度も1300万トンしか生産できなかった。カナダも通常2500万トン前後が今年度2005万トンに急減した。春先に低温、夏場に熱波という異常気象になったためだ。EU27カ国の生産量も、熱波や山火事などの影響で約500万トン生産が落ちた。
 

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