苦境のアパレル、コロナで直面した「人事改革」 リストラ頼みでは回復への道のりは険しい
ワコールは約1年前、社内の人員再配置を推進するため、販売員がECの部署に移籍し、自社EC上でのチャット接客にも対応できるようにする体制を構築。コロナ禍でECの売り上げが急増したことも受け、現在は社員6人が専従で業務に当たる。
膨大な種類の下着を取りそろえる同社では、EC上でも「自分に最適な商品やサイズはどれか」といった相談が多数寄せられる。店頭と同様に顧客の個別ニーズに沿った商品提案ができるよう、今後も随時、販売員からの転換を進めるという。
収益改善に向けた課題は山積
もっともこれだけの配置転換では、売り場の収益改善に向けたハードルは高いままだ。採算悪化が著しい百貨店は売り場ごとに取引条件の見直しの交渉も進めているが、安原社長は「販売員の役割を見直し、セールスマン(営業社員)を含めた人員の効率化を進めていく」と話す。
卸売り先の百貨店と量販店では、本部の営業社員が売り場を頻繁に訪問し、得意先との商談のほか、販売員から商品の売れ行き動向などを聞き取り、課題を吸い上げてきた。それを今後は小売店の店長のように、販売員自らが売り場の採算管理などを行えるよう能力開発を強化していく方向で考えているという。
営業社員の担ってきた業務の一部を販売員に任せられるようになれば、販売組織全体の業務をより効率的な人員体制で回し、余剰となった社員を他の強化部署に転換させることもできる。ただ配置転換や業務の見直しは社員の意識変革も必要となり、スピード感と一体感をもって進められるかが成否を左右しそうだ。
コロナ禍は多くのアパレル企業にとって、従来のコスト構造を見直す転換点になった。たとえリストラで危機をいったん脱しても、”人”の力がなければ、次の成長へと向かう道のりは険しさを増す。大きく変化する消費者の購買行動や衣料品への需要にどう機動的に対応していくのか。リストラに踏み切った企業も、そうでない企業も、それぞれ難しい舵取りを迫られている。
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