日本が「ワクチン開発競争に負けた」納得の理由 あまりに鈍感すぎたこの国の感染症対策

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確かに、モデルナの創業者ロッシは今春、14年以降、現在までに鳥インフルエンザなど7つの感染症のmRNAワクチンで臨床試験に入っているとメディアの取材に答えている。今回の見事なワクチン供給は、科学者の知性の差というより国家の安全保障投資の差なのだ。

ワクチンが新幹線や原子力に代わる「武器」に?

「戦略物資」とする視点から森下は「新たなワクチン同盟圏ができつつある」と予想した。共産党創100年を来年に控える中国はアフリカや東南アジアに次々とワクチン提供を申し出て一帯一路圏への影響力を誇示した。ロシアが臨床試験の終了を待たずにワクチンを承認したのは、経済停滞下での起死回生策と映る。フィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ大統領は中ロ双方に秋波を送るなどしたたかだ。

「渡航制限を緩和するなら、同じワクチンを使う国から始めるのは合理的だから、そこから世界が改めて色分けされていく可能性もある。同盟国でも、ワクチンを打っていなければ合同軍事演習もできない」

そう言う森下は日本にはワクチンの戦略が欠けているとみる。「自国分の開発に躍起のアメリカも、物量に余裕ができれば次第に中国と同じことをやり始める。日本もワクチンが増えれば、新幹線や原子力に代わる外交上の武器になるのに」

次に会ったのは、防衛省防衛研究所の社会・経済研究室長、塚本勝也だ。まだ機密の多いDARPAについて、数冊の専門書の書評を書いていた。塚本はこの組織のルーツが米国の「技術敗戦」の反省にある点から解き明かした。

「きっかけは1957年のスプートニク・ショックだ。ソ連に人工衛星打ち上げの先を越され威信を失ったアメリカは、翌年に前身のARPAを置き、後に軍事に領域を絞ってディフェンスのDがついた。冷戦終結で脅威は核から生物化学兵器に移り、ワクチンの重要性が高まった」

91 年の湾岸戦争終結後、イラクが生物化学兵器を製造していた痕跡が見つかった。95年に日本で地下鉄サリン事件を起こしたオウム真理教は、93年に炭疽菌を屋外で実験的にまいていた。01年の9・11 同時多発テロ直後には炭疽菌を使ったテロで米国に死者が出た。

危機感を強めた米軍は自らワクチン開発への関与を始める。注目された新しい技術が、RNAやDNAのワクチンだったことは先に触れた。

「注意がいるのは、従来のワクチンに比べ免疫反応が長続きしない可能性があること。当面の作戦に間に合う期間だけ免疫反応が一時的に上がればいい、という発想がある。そうした軍需由来のワクチンが民生用として適しているかどうか」

さらに危ういのは、そのワクチンの短期的な成功が軍事以上に国際政治に影響する点だと、塚本は言う。

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