「ヒルズに留まって」森ビル、グリー慰留の手札

オフィスビルで相次ぐテナント引き留め合戦

田町への移転を取りやめた代わりに、現在本社を構える「住友不動産青葉台タワー」(東京・目黒区)内の別フロアに移転を行う。「住友不動産は自社ビル内での移転においては、テナントの移転費用を優遇するケースが多い」(オフィスビル関係者)。移転経緯について、アンドファクトリーは守秘義務を理由にコメントをしていない。

【2020年11月24日14時20分追記】オフィスビル関係者のコメントを一部修正しました。

ビルオーナーがテナントにラブコールを送る姿は、貸し手優位だったオフィス力学の変化を示唆する。空室が逼迫していた昨年まではオフィスの選択肢がなく、高い賃料や契約満了まで退去できない契約形態でも入居せざるをえなかった。ひるがえって、空室が増えた現在では移転先オフィスの選択肢が格段に増えており、テナントの囲い込みはコロナ禍で加速しそうだ。

都内のある中規模オフィスビルでは、「他社のビルに移らないで、と管理会社の社長直々にテナントを引き留めたようだ」(オフィス仲介会社)。オーナーはテナントに対してさまざまな「特典」を提示し、引き留めに奔走する。

多種多様なオーナーの「特典」

「特典」の筆頭は、入居後一定期間の賃料を無料にするフリーレントだ。多少賃料を減免しても、空室が続くよりはマシという判断から、足元では「3カ月程度のフリーレントは珍しくなくなっている」(オフィス仲介会社)。上場REIT(不動産投資信託)のOneリートは、10月15日に発表した決算にて「フリーレント期間は以前に比べて長くなる」と予測する。リーマンショック後の不況期には6カ月や12カ月といった大胆なフリーレントも登場しており、フリーレントの長さはビルオーナーの強気・弱気を表す。

オフィス縮小の潮流を受け、フロアの「小割り」を容認するオーナーも増えている。たとえば、ワンフロア100坪を借りていたテナントが、テレワークの導入を機に50坪に縮小したいといった具合だ。細切れになったオフィスは管理に手間がかかり分割を嫌うオーナーも少なくないが、「フロアが丸ごと空くよりはマシ、という判断から容認するオーナーが増えている」(別のオフィス仲介会社)。

あの手この手でテナントに働きかけるオーナーだが、賃料そのものの減額は最後の切り札として温存する。一度低い賃料で入居させてしまうと、その後の増額が難しい。ファンドなどが保有している物件では「ビルの利回りが下がる」(大手デベロッパー)ため、オフィスビル自体の価値を毀損してしまう。この点、時限的な措置であるフリーレントは利回りに影響を与えないため、最初に切るカードとして選ばれやすい。

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