ニコンが赤字転落、「カメラ不振」で迎える難所 人員削減や生産拠点の集約などリストラを加速

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ここで独走しているのがソニーだ。2013年に世界初のフルサイズミラーレスカメラを発売し、2019年のミラーレスの世界生産台数シェアは約42%と圧倒的。ミラーレスの勢いを武器に、2019年のデジカメ全体の出荷台数でもニコンを抜いてソニーが2位に浮上した。

一方、ニコンは一眼レフとの食い合いを恐れ、2018年にようやくミラーレスに本格参入。2019年のミラーレス生産台数はソニーの165万台に対し、ニコンは28万台しかなく、その差は歴然としている(テクノ・システム・リサーチ調べ)。ニコンと一眼レフでライバルだったキヤノンもカメラは苦しいが、7月に発売したフルサイズミラーレスカメラ「EOS R5」が高い評価を受けており、売れ行きは好調だ。

こうした中、ニコンも今年下期にミラーレスを一気に3モデル新投入し、プロ・ハイアマ向けとハイエンド商品群に注力する方針だが、ニコンが出遅れを巻き返すことができるのか懸念も残る。社内では世界を席巻した一眼レフ志向が根強く、今後は開発費や販促費をミラーレスへシフトしていくことも欠かせない。

新規事業も伸び悩む

他方、事業別売り上げで最大となる精機事業にも暗雲が漂う。2021年3月期の営業利益見通しは前年比約98%減の10億円。液晶露光装置は中期的に好調が見込めるものの、半導体露光装置の販売台数は前年比18台減の27台にとどまる見通しだ。今後、半導体検査装置など収益源の多様化などを図る方針だが、先行きは不透明だ。

新規事業も伸び悩む。創薬や再生医療に活用される細胞培養事業などを含むヘルスケア事業は2017年から赤字が続く。

また2019年には工作機械事業にも参入し、工作機械大手のDMG森精機と業務提携。両社でレーザー加工機などの製品開発を行い、DMG森精機の販売網を活用しているが、製品群はまだ少ない。市場関係者からは「細胞培養や工作機械について知見がほぼないニコンがやる必然性が見えない」という声も上がる。実際、ニコンの株価は右肩下がりで、1年前の半分以下になっている。

2021年度までの中期経営計画では、新規事業など成長領域に積極投資することで新たな収益の柱の創出を目指している。既存事業が低迷する中でも健全な財務基盤を生かし、ニコンは持続的成長を実現できるか。

大竹 麗子 東洋経済 記者

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おおたけ・れいこ

1995年東京都生まれ。大学院では大学自治を中心に思想史、教育史を専攻。趣味は、スポーツ応援と高校野球、近代文学など。

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