ジムニー購入者が明らかにする唯一無二の価値 426名のユーザーから見えたジムニーの存在感

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実際、購入目的では「キャンプ」「レジャー・スポーツ」「運転すること自体を楽しむ」といった項目が高く出ており、日常利用よりも特別なシーンやマインドでの利用が想定されている。

楽しみを重視することやこだわりの強さという点では、ほかのデータでもはっきりと出ている。

「車は自分にとって趣味」「車は買ったままではなく自分なりに手を加えたい」「多少高くてもいつまでも使えて飽きのこないものを選ぶ」の設問において、「あてはまる」のスコアがほかの車種より高かったのだ。

「購入時の前提条件」(複数選択方式)の結果から、ユーザーが何をジムニーに求めるかを見ていくと、ジムニーの強みが明らかになった。1つは、ジムニーという「車名」の強さだ。

一般的に「車名」のスコアが高くなるには、車種に歴史があり、長きにわたり愛されてきたという要素が必要となる。今回、取り上げた車種以外を見渡しても、スズキの中でこの項目が30ptを超えるのはジムニーのみだ。このことからも、ジムニーが唯一無二の存在であることがわかる。

ちなみに他メーカーで30ptを越えるのは、トヨタ「クラウン」、同「ランドクルーザー」、日産「スカイライン」、ホンダ「S660」、レクサス「LS」、同「GS」、フォルクスワーゲン「ゴルフ」などだ。

また、「特定の機構」のスコアも高い。これは主にメカニズムについてのスコアで、ラダーフレーム構造であることや、MT車の用意があることが求められた結果だと読み取れる。

一方で、「安全運転支援機能」のスコアは低い。また、「購入予算」「燃費」のスコアも低く、ユーザーが重視している点とそうでない点がはっきりと出ていると言える。

オンリーワンの立ち位置は揺るがない

最後に、「購入車を気に入った点」を確認してみよう。

「スタイルや外観」「駆動方式」などの評価が高く、一方で「乗り心地」「燃費の良さ」に高評価をつけた人は少なかった。先の「購入時の前提条件」からも見えたとおり、そうした点はそもそもジムニーに求められておらず、ジムニーのキャラクター通りの結果となっている。

人々のニーズや価値観、日々接触する情報、それらに応じたマーケティング活動が多様化する中、“違い”を生み出し、競合と差別化することが困難な昨今。ジムニーが示した“長きにわたってコンセプトを変えない”という開発・販売戦略は、オンリーワンの立ち位置の獲得という形で結実した。トレンドが日々激しく変化する現代において、やり続けることの価値を示した1つの成功事例と言えるだろう。

三浦 太郎 インテージ シニア・リサーチャー

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みうら たろう / Taro Miura

北海道大学大学院理学院卒業後、インテージ入社。自動車業界におけるマーケティング課題の解決を専門とし、国内最大規模の自動車に関するパネル調査「Car-kit®」の企画~運用全般に従事。

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