石破氏、「孤立の果て」に派閥会長辞任の哀愁 派閥は空中分解の危機、ポスト菅レースに影響

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10月22日、記者団の質問に答える石破茂元幹事長(写真:時事)

自民党総裁選での惨敗を理由に、石破茂元幹事長が自ら立ち上げた石破派(水月会)の会長を辞任してから3週間余。石破氏の意思に反して後任会長は決まらず、同派は空中分解の危機を迎えている。

石破氏の総裁選出馬は今回で4度目。1強と呼ばれた安倍晋三前首相の唯一の対抗馬として、国民的には「次の首相候補ナンバー1」の人気を維持していた。しかし、「令和おじさん」と「苦労人」を売り物にした菅義偉首相に惨敗した。

人事での冷遇が会長辞任に

石破氏が突然、派閥会長辞任を宣言したのは、10月22日の石破派臨時総会だった。石破氏は9月の党総裁選で68票に終わり、377票の菅義偉首相には遠く及ばず、89票の岸田文雄前政調会長にも差をつけられての最下位となった。安倍晋三前首相との一騎打ちとなった前回の2018年総裁選では73票の国会議員票を獲得したが、今回は26票にとどまった。

石破氏は自民党議員の支持の少なさを「自らの不徳の致すところ」と反省しきりだ。安倍氏や麻生太郎副総理兼財務相による「多派閥談合での強烈な石破つぶしが原因」(自民幹部)との分析もある。

石破氏は領袖辞任に当たり、「自ら何度も反すうし、懊悩(おうのう)した。(石破派の)みんながつらい思いをしてきたことに対して、言葉だけでは足りない」と説明。石破派に所属する議員が党・内閣人事で冷遇され続けたことが、苦渋の決断につながったと述べた。

石破氏は当選11回で、ポスト安倍候補では最長の議員キャリアを持つ。4度目の総裁選出馬について、周辺では「これが最後の戦い」との声も出ていた。

常に正論を吐き、安倍、麻生両氏が首相在任中に窮地に陥った際、「党のために退陣すべきだ」と直言したこともある。ただ、安倍、麻生両氏は周囲に「あれ(退陣の直言)は絶対に忘れない」と漏らしたとされ、党内では「それが今回総裁選での石破つぶしにつながった」(自民幹部)とみられている。

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