石破氏、「孤立の果て」に派閥会長辞任の哀愁 派閥は空中分解の危機、ポスト菅レースに影響
安倍氏の無投票再選となった2015年9月の総裁選直後に、20人の議員で旗揚げしたのが石破派だ。以来、各種世論調査での「ポスト安倍」をめぐる人気投票で他候補を圧倒し続けていたが、派閥の勢力は拡大できず、今回の総裁選でも必要な推薦人20人にも届かない19人にとどまっていた。
総裁選惨敗を受け、石破氏は所属議員と今後の派閥運営について意見交換を続けたが、「いつまでも反主流派では、議員としての活動に限界がある」(派幹部)との不満が噴出。石破氏を支えてきた同派の最高幹部も「このままでは自滅する。グレートリセットが必要」と主張したことが会長辞任につながった。
事実上の総裁選からの撤退宣言
石破氏は辞任に当たり、石破派事務総長の鴨下一郎元環境相に後任会長への就任を打診したが、鴨下氏は固辞。他の有力議員も手を挙げずに後任選びは難航している。このため、毎週木曜日に開かれてきた派閥例会も、「何も決まらないままでは開けない」(幹部)と休眠を余儀なくされている。
しかも、当選10回の山本有二元農水相が派閥の会長代行退任を表明したことで、「もはや派閥の体をなさず、存続も危ぶまれる状態」(幹部)となった。このため、同派との交流がある竹下、岸田両派が、それぞれ親交のある議員の勧誘を始めるなど、各派の勢力拡大のための「草刈り場」となりつつある。
菅首相の党総裁としての任期が切れる2021年9月には、再び総裁選が実施される。領袖を辞めた石破氏は「これから先もその立場を与えていただけるとありがたい」と出馬に含みを残すが、「推薦人も確保できない」との厳しい声が相次ぐ。今回、石破氏と「2位争い」を展開した岸田氏も石破氏の辞任に当惑を隠さず、「菅政権が着実に実績を積み重ねれば、石破氏の会長辞任で無投票再選論が強まる」(岸田派幹部)との見方も広がる。
今回総裁選で石破氏が好んで揮ごうしたのは「鷙鳥不群」(しちょうは群れず)。「猛禽類の鷲(わし)や鷹は群れない」という意味だが、石破氏の党内の立場も象徴している。自民党内では石破氏の会長辞任を「孤立の果ての総裁選撤退宣言」(長老)と受け取る向きが多い。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら