「英語工場の看板」を取り替えよう [対談]大西泰斗×斉藤淳の英語勉強法(5)

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「工場の看板」を掛け替える時がきた

大西泰斗(おおにし ひろと) 東洋学園大学教授。筑波大学大学院文芸言語研究科博士課程修了。英語学専攻。オックスフォード大学言語研究所客員研究員を経て現職。『ネイティブスピーカーの英文法』(研究社)、『ハートで感じる英文法』(NHK出版)、『一億人の英文法』(東進ブックス)、『DVD付 たった12単語でわかる 英語のきもち』(KADOKAWA)など、数々の著作がある。NHK Eテレの講師としても活躍し、2013年10月より「しごとの基礎英語」講師を担当。

大西:「読めればいい」の英語から実用英語へ、この流れは止まりません。ならば、「工場」の看板は取り替える必要があります。

斉藤:というと?

大西:自転車工場で自動車はつくれないということですよ。今まで私たちが磨いてきたのは、いかに効率よく文を解釈するかについての技術であり、その教授法です。それで立派な自転車が出来上がった。

ですが、実用英語は別物――いわば自動車です。自転車をつくるラインしかない工場で自動車を組み上げることはできません。自動車を要求している顧客に対して、依然として自転車をつくっている。それが、世間の英語教育に対する不信・不満につながっているのです。

「学校の成績はよかったのに、なんで話せないのか」はその典型です。当然ですよ、学校でやっているのは「読む訓練」なのですから。

斉藤:現場の先生方もたいへんですね。「英語を読める子を育ててくれ」と言われていたのに、今は「話せなければ意味がないじゃないか」と言われている。まさに「話が違う」というやつですね。

大西:私が高校教師を志した30年前には、読解・文法指導ができて偏差値を上げることが英語教員の主な仕事でした。それが突然「英語で授業をやれ」だの「しゃべれるようにしろ」だのと言われている。そりゃたいへんですよ。話がまったく違います。

ですがやらなければなりません。

私も斉藤先生と同じように、ここは一度、英語教育の方向を大きく変えなくてはならないと考えています。看板を取り替えることですよ、英語工場の看板を。「チャリじゃなくてクルマをつくりましょう」と。工場の看板を掛け替えても、すぐに設備は変わりません。ですがまずは看板。目標をキチンと掲げれば、若い才能も創意工夫も集まってきます。そうやって新しい工場に仕上げていくのです。先ほど斉藤先生に評価していただいた『一億人の英文法』は、実用英語を目指す工場の標準設備を目指しました。

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