中国「ガソリン車禁止」で日本車有利になる訳 ハイブリッド車で先行した日本企業の優位性
2020年1~9月の中国でのHV販売台数は約29万台で、通年では40万台に達する見通しだ。
現在、市場全体の9割超を日系HVが占めているが、トヨタ「カローラ」、同「カムリ」、ホンダ「アコード」などが、現地生産により高いコストパフォーマンスを実現しているためだ。また、全量を輸入販売するレクサスは、消費者に高品質と技術の差別化を訴求し、HVモデルの販売拡大を行っている。
吉利汽車(ジーリー)、長城汽車(グレートウォール)、長安汽車(チャンアン)を除くと、多くの地場メーカーはHVの開発を中止し、EVやPHVの開発に力を入れている。省エネ技術が未成熟であることや研究開発費の負担が大きいこと、外資系メーカーによる基幹部品の寡占などを考慮すると、構造が複雑で開発コストも高いフルHVの市場に地場メーカーが参入するのは困難だからだ。
特許を公開するトヨタ、48Vで攻めるドイツ勢
そんな中、中国でのHVの販売台数が累計100万台を突破したトヨタは、HVの特許を無償開放し、中国でHVシステムの販売の強化を図ろうとしている。2020年10月には、HVの基幹システムを中国自動車大手の広州汽車(GACモーター)に供給開始。海外企業へのHV技術の外販は、これが初めてである。
また、エンジンが発電専用とし、モーターのパワーだけで走行するレンジエクステンダー(E-REV)も、中国政府の推進分野となった。日産は独自のHV技術「e-POWER」を採用した車両など、計9車種を2025年までに中国に投入する予定だ。
中国のエコカー政策をHVビジネスに生かす動きが広がっていけば、部品メーカーを含む日本勢にとって追い風になるだろう。また、中国におけるエコカー政策の軌道修正は、HVに強みを持つ日本車の需要も喚起すると期待される。
他方、構造がシンプルなマイルドHVへの期待が次第に高まる中、ドイツ系サプライヤーが中国で48Vシステム(電源電圧を48ボルトに引き上げたモーター・電池パックなどの組み合わせ)を大量に供給すれば、そのシステムを使った48VマイルドHVは日系HVの競合相手となる。
中国では、HVをNEVとして推進されるPHVと同様に過渡期のソリューション車両として位置付けており、HVで達成不可能なCO2削減を実現するためには、ゼロエミッション車両も不可欠だ。
今後、日系企業は、中国で省エネ車を戦略の主軸に据えながら、EV市場の開拓に本腰を入れる必要がある。ガソリン車とEVのバランスを取りながら、規制対応も行いつつ、消費者ニーズにも適応する戦略の舵取りが求められているのである。(論考は個人的見解であり、所属とは無関係です)
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら