現場からも悲鳴、ガソリン価格上昇の行方 円安に増税が追い打ち、どこまで高くなるのか

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日本エネルギー経済研究所石油情報センターの浜林郁郎・事務局長は、シェール革命がガソリン価格の下落を招くと指摘する。「米国のシェールオイル増産で、石油の需給は中長期的に緩和方向にある。早ければ今年後半から影響が顕在化する可能性がある」。

元売りの価格戦略や国内の需給状況を映したマージンの変動も、微妙な影響を与えそうだ。

JX日鉱日石エネルギーなど元売り各社は、6月から系列特約店に対する石油製品の卸価格算定方法を改定する(一部は4、5月から改定)。現状の卸価格の基準であるスポット市場価格は「原油代や処理費用から見て、ありえない(低い)値付けになっている」(JX関係者)として、今後は主に原油代などのコストを基準とした体系に変更する。

これによりマージンを改善させ、軒並み赤字に陥っている石油事業を立て直す狙いだ。各社とも、一部製油所の停止まど需給改善の効果も含めて、2014年度の石油製品平均マージンは前期比3円前後の拡大を見込む。

現場からは反発の声が上がる

卸売りマージンの拡大は店頭価格にも上昇圧力となる。問題は、構造的に需要が減退する中で、SS側がそのまま店頭価格に転嫁できるかだ。現場のSS関係者からは「元売りの卸価格体系変更は一方的。店頭への転嫁はギリギリの選択」「元売りは需給対策やコスト削減の徹底で対応すべきだ」といった反発の声も聞こえる。

無理な価格政策は需要減退を助長し、需給ギャップを拡大させる。余剰品は系列外取引市場に安値で出回り、一部のSSによる乱売合戦に拍車をかける。結局、元売り自身の首を絞めるだけだ。

元売りが収益体質を立て直すためには、需要に見合った継続的な供給能力の再編、精製・物流・販売管理コストの徹底した圧縮、輸出競争力の強化など、根本的な対策が必要だろう。

「週刊東洋経済」2014年5月31日号<5月26日発売>掲載の「価格を読む」に加筆)

中村 稔 東洋経済 編集委員
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