一見お得な「外貨建て介護保険」の危険なワナ 将来の「要介護」に備え保険を買う必要はある?

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厚労省の「介護給付費実態調査」によると、要介護認定を受け始める平均年齢は75歳で、2人に1人が要介護状態になるのは85歳以降となっています。今回の50歳の弥生さんの場合だと、35年後です。

もちろん、より充実した介護を受けたいということで、今から民間の介護保険に加入するのも選択肢の1つでしょう。でも、なるべく長く健康でいられるように、50歳の今、例えば、スポーツクラブに入会するなど健康を増進し要介護状態にならないための対策も検討してはいかがでしょう。

また、先のことですから、お金の価値も変わっていることもあります。私的保険は、契約時に支払われる保険金額が決まります。公的年金と違い、物価の上昇に応じて、保険金も増えるというものではありません。

三上さんが検討している保険の保険金額は、現在のお金の価値で約束されたものです。もし30年後にインフレで物価が高くなっていれば、実質的な保険の価値は下がります。このように長期契約が前提となっている保険は、受け取り時の保険金額について、時間による貨幣価値の低下を考える必要もあるのです。今の1000万円と30年後の1000万円の価値は、同じではないことに注意が必要なのです。

やっぱりあえて外貨建てで保険を持つ必要はない

いろいろ考えてきましたが、それでもあえて「外貨建て」で保険を持つ必要があるのか、最後にもう一度考えたいと思います。

外貨建て保険による積み立て金等は、一般的にはいつかは日本円に戻します。その時、加入時よりも円高ならば元本割れしてしまうことだってあります。円建てより金利が高く魅力的に見える積み立て利率ですが、運用、保障、為替を交換する費用などたくさんの手数料がかかりますし、今後の為替次第では、せっかくの運用益も吹き飛んでしまいます。

さて、前半で述べた「諸々の事情」とは、まさに、このコロナ禍で、為替相場が乱高下して円換算の価値が下がったり、海外の長期金利が低下して積み立て利率も下がっているなどの影響で、各社、保険内容を変更しているということです。高金利を売りにしてきた外貨建て保険の魅力も薄れているかもしれないということも知っておいてほしいのです。

もちろん、外貨建て保険は絶対にダメだと言っているわけではありません。消費者として、為替リスク、市場リスクをはじめ、かかるコストなど、商品の内容を理解したうえで購入していただきたいのです。

そして、販売者の方へお願いです。多くの方は、プロとして顧客本位で販売されていると思いますが、残念ながらそうではない人もいるのは事実です。くれぐれも適合性の原則を遵守し、顧客本位で販売していただければと思います。

岩城 みずほ ファイナンシャルプランナー・CFPⓇ

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いわき・みずほ / Mizuho Iwaki

特定非営利活動法人「みんなのお金のアドバイザー協会(FIWA)」副理事長。金融商品の販売によるコミッションを得ず、お客様の利益を最大限に、中立的な立場でのコンサルティングほか、講演、執筆を行っている。
慶応義塾大学卒。NHK松山放送局を経て、フリーアナウンサーとして14年間活動後、会社員を経てFPとして独立。著書に増補改訂版『人生にお金はいくら必要か』(山崎元氏と共著・東洋経済新報社)、『やってはいけない!老後の資産運用』(ビジネス社)、『「保険でお金を増やす」はリスクがいっぱい』(日本経済新聞出版社)、『結局、老後2000万円問題ってどうなったんですか?』(サンマーク出版)ほか多数。HP

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