一見お得な「外貨建て介護保険」の危険なワナ 将来の「要介護」に備え保険を買う必要はある?

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介護保険も同じです。まず、国のかなり充実した介護保険制度の内容を正しく理解しましょう。確かに少々複雑でわかりにくい部分もありますが、ひとことで言えば、高齢者が、可能な限り、住み慣れた地域で、なるべく自立した日常生活が送れるように、医療、介護、介護予防、住まい、自立した日常生活支援が包括的に確保される体制「地域包括ケアシステム」が実現できるように、制度設計されています。

拠点となる「地域包括支援センター」は、地域に密着した細かなサービスが受けられるように、支援が必要な人の元へ30分以内で駆け付けられる距離、おおむね中学校の2校区に1つの割合で設置されています。

一番重い「要介護5」だと自己負担はどれくらい?

介護保険給付を利用するのは、原則65歳以上ですが、1カ月当たりの介護サービスの自己負担はおおむね1割。所得の高い人でも2~3割です。最重度の介護を必要とする状態が「要介護5」ですが、自己負担額と利用できるサービスは次のようになっています。

確かに上限を超えてサービスを利用すると、超えた分は自己負担になります。しかし、自己負担額の合計が高額になった場合は、健康保険の高額療養費制度のように軽減制度がありますし、世帯合算、医療費と合算することもできます。

ちなみに、受給者1人当たりの平均費用額が限度額内で収まる割合は、要介護5で約65%、限度額を超えて利用している者の割合は、約5%だそうです(145回社保審介護給付費分科会)。

もちろん、将来、介護職の人手不足で、十分なサービスが受けられないかもしれないという問題もあると思います。しかし「介護に莫大な費用がかかりそうだから、今から介護保険に入っておきましょう」というのはミスリードになりかねません。

また、介護保険の費用は、半分が税金で、半分が40歳以上の人が支払う保険料でまかなわれています。保険料は、65歳未満は、健康保険の保険料と合わせて徴収されています。会社員などは、原則「労使折半」です。

介護保険では、介護給付、予防給付、市町村特別給付の3本柱で、1日でも要介護状態になるのを遅らせるように、さまざまなサービスが医療と一体となって行われています。私たちはすでにこのような充実した介護保険を持っているのです。詳しくはこちらの資料をご覧ください。

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