身勝手な人の脳が「活性化しにくい」カラクリ 相手を思いやれない人は幸せの感じ方が薄い

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「人に何かをしてもらったとき」と「人に何かをしてあげたとき」、このどちらもが幸せを感じるという結果が出たのです。

ところが、「人に何かをしてもらったとき」の幸福感は、プレッシャーやストレスに簡単に打ち消されてしまうことがわかりました。

一方、「人に何かをしてあげたとき」の幸福感はたとえプレッシャーやストレスを感じることがあってもなくならないのです。

つまり、人に何かをしてあげること、人の幸せを思いやることというのは、自分の幸福感を長続きさせる効果があることがわかってきました。

さらに、幸福を感じている脳は、脳のアクセルが活性化して脳機能全体が高まることがわかっています。

普段から利他の脳回路を使って鍛えることで、自分が大変なときにでも、誰かのためになることができるようになります。

普段から簡単なことでいいので、「自分に何かできることはないか」と考えてみてはいかがでしょうか。

自分と相手の脳がお互い力を交換し合っている

さらに、利他の行動をしたときだけでなく、人は存在するだけで誰かの力になることが科学的にわかっています。

これは「存在効果」といわれるものです。

フランス・リヨン大学のモンファルディニ博士らは、3匹の猿を使って「存在効果」について調べました。

博士らは、タッチモニターに絵が現れたときに30秒以内にモニターに正しくタッチするとグリーンのランプが点き、ごほうびが出てくる、間違えると赤かグレーになり、ごほうびが出てこないという装置を用意しました。

このタスクを猿に行わせると、1匹で取り組んだときよりも他の猿が見守っているときのほうが正解の頻度が上がったのです。

そしてこのとき、猿の脳を調べると、注意を向ける脳内ネットワークが活性化しており、仲間がいること自体が脳の活性化を高めることが明らかになりました。

この研究からわかるのは、脳というのは「他者」の存在から力を得るということ。

気の合う仲間や家族などと楽しく過ごし、感謝の気持ちを伝えたり、勇気づけたり、互いに夢を語り合うなどすると、何だか元気になるときがありますね。

それは、脳が互いの力を交換し合っているからなのです。

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ところでこのとき大事なのは、お互いが相手の成長や行動に目を向け、良い点に注目すること。

たとえば、みんなの心がバラバラなところに、「このチーム(会社)は、日本一を目指しているので、みなさんがんばってください」と言う。

または、お互いを深く信頼し合っている仲間に、「こんな仲間と一緒に仕事ができることは、本当に素晴らしいことです。みなさんのような仲間と出会えたからこそ、日本一を目指したい」と言う。

どちらが、本気で日本一を目指したくなるかといえば、後者ではないでしょうか。

お互いの存在に感謝しあっている状態が脳をパワフルにしてくれるのです。

岩崎 一郎 脳科学者、医学博士

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いわさき いちろう / Ichiro Iwasaki

京都大学卒。京都大学大学院修士課程修了後、米国・ウィスコンシン大学大学院で医学博士号(Ph.D.)取得。旧通産省の主任研究官、米国・ノースウェスタン大学医学部脳神経科学研究所の准教授を歴任。脳科学を活用し、普通の知性の人たちが天才知性を超えるパフォーマンスを発揮できる組織づくりの企業研修を提供する会社「国際コミュニケーション・トレーニング株式会社」を創業。著書に、『科学的に幸せになれる脳磨き』(サンマーク出版)、『何をやっても続かないのは、脳がダメな自分を記憶しているからだ』(クロスメディア・パブリッシング)などがある。

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