「小児性愛者による闇政府」信じる人が多い理由

大統領選前に「Qアノン」が勢いづいてきた

Qアノン現象はトランプ氏の集会ではおなじみの光景となっている。Qアノンのシャツや帽子を身につけた参加者は至る所にいる。ラスベガスで行われた最近の集会では、よちよち歩きの子どもにQアノンのシャツを着せた夫婦が堂々とした様子でポーズをとり、その場に居合わせた人々との写真撮影に次から次へと応じていた。

トランプ氏が新型コロナに感染したときも、同氏が入院したウォルター・リード米軍医療センター前にQアノン信者が集まり、トランプ氏に声援を送る様子が見られた(Qアノン信者には、トランプ氏が入院したという事実すら疑う人もいた)。

ジョージア州カルフーンで保険外交員をしているスーザン・クーパーさん(59)は、自らはQアノンの支持者ではないが、知り合いの20〜25%がQアノン信者だとみている。取材した他の人たちも似たような数字を口にし、老若男女、経済力、住んでいる地域の別を問わず、さまざまな人たちがQアノンを信じていると話した。

Qアノンはキリスト教福音派の間でも勢力を広げている。ノースカロライナ州ケーリーにある南部バプテスト派の新聞「ビブリカル・レコーダー」は先日、Qアノンの危険性に警鐘を鳴らす記事を掲載し、編集主幹のセス・ブラウン氏はこう書いた。「キリスト教徒はQアノンによる狂信的で危険なメッセージを拒絶しなくてはならない」

過激なQアノンが共和党の予備選で圧勝

共和党の幹部や有力な献金者、有権者の間でも懸念は強まっている。だが、知名度の高い共和党議員で、この件についてはっきりと意見表明した者はほとんどいない。これは、彼らが穏健な有権者の支持を取り込まなければならない反面、熱狂的なトランプ支持者を敵に回すこともできずに、難しい立ち回りを演じなければならなくなったことを意味している。

「Qアノンは親トランプ運動であって、共和党の運動ではない」。こう語るのは、トランプ氏の支持者で今年、ジョージア州北西部からの出馬をめざして共和党の下院予備選挙を戦ったジョン・カウアン医師だ。「だが、トランプ大統領と共和党の理念と哲学は完全に一体だ」。

精神外科医のカウアン氏は、Qアノンの政治的影響力を文字どおり目の当たりにした。というのは、同氏が下院予備選挙の決選投票で大敗を喫した相手が、ごりごりのQアノン支持者として知られるマージョリー・テイラー・グリーン氏(46)だったからだ。今年拡散したフェイスブックの動画には、選挙活動中のグリーン氏が黒人やユダヤ人、イスラム教徒について侮蔑的な発言を行い、共和党支持者の中でも最も過激な層に取り入ろうとする様子が映っている。

Qアノンの信奉者の中には殺人、国内テロ、拉致計画などの容疑で告発されている者もいる。にもかかわらず今年8月、トランプ氏はQアノンを支持する人々を「愛国者」と呼んだ。トランプ氏の息子と娘、側近らもQアノン関連の投稿をソーシャルメディアでシェアし、拡散させてきた。世論調査で支持率が下がるにつれ、トランプ陣営の「Qアノン推し」はますます露骨なものになっている。

(執筆:Matthew Rosenberg記者)
(C)2020 The New York Times

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