日本版のアニメも参考、映画「家なき子」の魅力 「スピルバーグ的視点」で新たな感動ドラマ生む
だが、情の深い親方ヴィタリスに歌の才能を見いだされたレミは、犬のカピ、猿のジョリクールらと親交を深めながら、懸命に旅を続ける。さまざまな出会いや困難が渦巻く冒険の果てに、レミは運命の出会いを果たす――。
フランスの作家エクトール・アンリ・マロが執筆した児童文学『家なき子』は、新聞で連載後、1878年に出版され、時代を超えたベストセラーとなる。日本でも1903年に翻訳されて以来、現在に至るまで多くの子どもたちに愛されてきた。
日本では過去三度アニメ化されたこともあり、「家なき子」と聞けばアニメ版を思い出す人も多いかもしれない。
特に「あしたのジョー」の出崎統監督が手がけた、東京ムービー新社(現トムス・エンタテインメント)製作による日本版アニメシリーズ「家なき子」(日本では1977年~78年に日本テレビ系列で放送)は、1980年代にはフランスやイタリアをはじめ世界各国に輸出されており、世界中の多くの子どもたちにも愛されている。本作のメガホンをとったブロシエ監督も、幼い頃に日本版アニメ「家なき子」を鑑賞していたひとりだった。
スピルバーグ的視点で「家なき子」を解釈
もともとブロシエ監督に「家なき子」の映画化を薦めたのは彼の妻だったという。当初、その企画にピンと来なかったというブロシエ監督だったが、「スピルバーグ的な視点から読んでみて」と力説する妻の説得を受け、「大好きな監督であるスピルバーグが、いかに悲しい物語を子どもたちの目と無邪気さを通じて鮮やかに描くか。ひどくつらい現実に魔法のような一面を与え、時代ものの作品に壮大さを授けるかを思い出した」という。
そこで彼は過去に映像化された「家なき子」の数々をチェックしたという。そこで改めて感銘を受けたのが、ブロシエ監督が幼少期に観ていた日本版アニメシリーズの「家なき子」だった。
「興味深いことに、日本のアニメが最も原作に忠実な解釈をしているんだよ。プロットだけでなく、細部をハッキリ見せたアート・ディレクションもね。一部の人にとって、レミの帽子に巻かれた飾りや、(猿の)ジョリクールの衣装といったものは、懐かしい記憶を呼び起こすんじゃないかな」と語るほどに、日本版アニメはブロシエ監督にインスピレーションを与えたという。
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