日本版のアニメも参考、映画「家なき子」の魅力 「スピルバーグ的視点」で新たな感動ドラマ生む

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レミを演じるのは、400人以上のオーディションの中から選ばれたマロム・パキン。撮影当時11歳だった彼は、本作が映画初出演となる。そのけなげさと勇敢さ、無垢なかわいらしさは観客を魅了する。パリ・オペラ座合唱団でボーイソプラノの歌手としてトレーニングを受けていたこともあるマロムは、劇中で美しい歌声を披露。その澄み切った歌声が響き渡るシーンは、一服の清涼剤ともいうべきシーンとなっている。

動物たちの「名演」にも注目 © 2018 JERICO – TF1 DROITS AUDIOVISUELS – TF1 FILMS PRODUCTION – NEXUSFACTORY - UMEDIA

レミの才能を見いだし、導いていく初老の旅芸人ヴィタリスには、『あるいは裏切りという名の犬』『八日目』などフランスを代表する俳優、ダニエル・オートゥイユが務める。撮影中、マロムに「カメラを見るな」「失敗したテイクがあっても気を落とすな」と集中するためのアドバイスを与え続けていたといい、まさに劇中のヴィタリスとレミのような良好な関係性を保っていたという。

また、夫が拾ってきた赤ん坊のレミに愛情を注ぎ、11歳になるまで育ててきたバルブラン夫人には『8人の女たち』『スイミング・プール』のリュデュヴィーヌ・サニエを配役。さらに足が不自由な娘を笑顔にしてくれるレミに好意を抱き、彼に優しく接するイギリスの貴婦人、ハーパー夫人役には、『冷たい水』『カップルズ』のヴィルジニー・ルドワイヤン、少年時代を回想する老いたレミ役には『ニュー・シネマ・パラダイス』のジャック・ペランなどフランス映画界を代表するキャストが集まっている。

古いカメラレンズを使って美しい景色を表現

またレミと友情を育む忠犬カピ、キュートな猿のジョリクールといった旅の一座を演じる、サーカスで芸の訓練を受けたボーダーコリーのダークネス、タレントとしての経験豊富なオマキザルのティトら、動物たちの「名演」も注目だ。

劇中では、レミが幼少期を過ごした村や、一座と旅するフランスの美しい風景を壮大なロケーション撮影で表現。フランス南部のオクシタニー地方、オーブラック地方、タルヌ県など、これまで映画ではめったに撮影されてこなかった地域での自然の景色が楽しめる。

また、撮影にはアメリカのクラシック映画の撮影に使われた古いレンズを使用しており、シネマスコープの大画面で、まるで絵はがきのような美しい景色を堪能できることも大きな魅力だ。

数奇な運命に翻弄されるレミの波瀾万丈な人生には、いくつもの壁が立ちはだかる。だがそんな困難な状況でもレミはしっかりと前を向いて歩み続ける。そんなレミのひたむきな姿、まなざしはきっとわれわれの胸を熱くさせることだろう。

壬生 智裕 映画ライター

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みぶ ともひろ / Tomohiro Mibu

福岡県生まれ、東京育ちの映画ライター。映像制作会社で映画、Vシネマ、CMなどの撮影現場に従事したのち、フリーランスの映画ライターに転向。近年は年間400本以上のイベント、インタビュー取材などに駆け回る毎日で、とくに国内映画祭、映画館などがライフワーク。ライターのほかに編集者としても活動しており、映画祭パンフレット、3D撮影現場のヒアリング本、フィルムアーカイブなどの書籍も手がける。

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