福島原発「生業訴訟」、なぜ国に勝訴できたのか

原告弁護団の馬奈木厳太郎事務局長に聞く

「一般に営利企業たる原子力事業者においては、利益を重視する余り、ややもすれば費用を要する安全対策を怠る方向に向かいがちな傾向が生じることは否定できないから、規制当局としては、原子力事業者にそうした傾向が生じていないかを不断に注視しつつ、安全寄りの指導・規制をしていくことが期待されていたというべきであって、上記対応は規制当局の姿勢として不十分なものであったとの批判を免れない」

この判決の、責任論におけるハイライトの一つは今挙げた箇所だ。これまでに国の責任を認めない判決もあり、今回で国との争いでは「8勝6敗になった」などと言われるが、今回の判決は単に8勝目ということではない。

福島原発事故の責任の究明のみならず、現在および将来の規制のありように警鐘を鳴らし、一石を投じたという意味でも、責任論のレベルにおいてはこれまでの判決の中で最高水準のものと言える。国や東電を相手取っている他の民事訴訟や、東電の旧経営陣を対象とした刑事訴訟への影響も大きい。

福島県外の被害者にも賠償を認めた

――原告の救済についても、一審判決よりも大きく前進しました。

重要な点は、国や東電の法的責任を認めたうえで、その責任の重さを、賠償額を算定するうえでの考慮要素にするとしていることだ。

9月30日の生業訴訟の仙台高裁で勝訴判決が出され、垂れ幕を掲げる原告団ら(記者撮影)

これまで被害者への慰謝料の金額は、原子力損害賠償法の無過失責任原則およびそれに基づいて国が定めた「中間指針」を踏まえて東電が決めてきた。しかし、過失の有無を問わないことから必然的に賠償水準は低くなるうえ、加害者である国や東電が賠償の基準、すなわち対象範囲や金額を決めるという問題があった。現行の賠償基準では、会津地方や栃木県、茨城県などの住民は対象外とされてきた。

今回の高裁判決は、福島県の会津地方や栃木県の妊婦・子どもの原告に対しても被害の存在を認めた。その結果、賠償対象者は原告総数約3650人のうち約3400人に広がった(一審では約2900人)。

また、原発周辺の自治体に在住し、避難指示の対象となった「帰還困難区域」や「旧居住制限区域」「旧避難指示解除準備区域」の原告に対しても、中間指針に基づき東電が支払ってきた金額からの大幅な上積み(1人につき150万円〈帰還困難区域〉、300万円〈旧居住制限区域〉、250万円〈旧避難指示解除準備区域〉)を認めた。その結果、賠償総額は約10億1000万円と、地裁判決の5億円から倍増した。

一審判決では認められていた茨城県の原告の被害が認められず、福島市や郡山市など「自主的避難等対象区域」の住民への賠償の上積み額が一審判決の水準から減額されるなどの問題はあるが、全体としては大きな前進となった。

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