突然、夫が「性犯罪で逮捕」された妻たちの絶望 「加害者家族」の知られざる葛藤
仁美は、いつものように生活費を下すため銀行に行くと「残高不足」という表示が出て現金を引き出すことができなかった。仁美はまさかと思い、夫の弁護人に相談すると、夫は4人の被害者にそれぞれ100万円以上の示談金を支払う予定で、既に弁護士報酬も発生している。
口座にはもうお金がないのだ。夫は実刑判決は免れず、長期の刑に服することも覚悟しなければならない状況だという。ローンが残っている自宅の処分も進めており、弁護人は仁美にすぐ転居先を探すべきだと促した。
義母は謝罪もせず「すべてあなたのせい!」
仁美は万が一、夫がけがや病気で働けなくなった場合に備えて、きちんと保険をかけてきた。しかし、まさか夫が犯罪を犯して生活に困ることなど考えもしなかった。
弁護人は、仁美に生活保護を申請することを勧めたが、仁美は現実が受け止められず親族に援助を求めた。仁美の実家の両親はすでに退職しており経済的余裕はないことから、夫の実家に連絡を入れてみると
「こうなったのはすべてあなたのせいです!早く離婚してください」
夫の母親はヒステリックに仁美を責め立て電話を切った。夫は両親に、事件を起こした原因は仁美から性行為を拒まれ続けたことだと手紙で伝えていた。2人の娘も母親にばかりなついて可愛いと思えなくなっていたという。
仁美はひどく傷ついた。事情聴取を受けたとき、警察官から同じ話を聞かされていた。しかし、夫がそんなことを言うはずがないと今まで信じていたのだ。
数日後、弁護人から仁美のもとに、夫の署名押印が済んだ離婚届が送られてきた。夫は実家の家族とは面会や文通をしているにもかかわらず、仁美に伝えられる連絡はすべて弁護人を通した事務手続きだけで、謝罪のひと言もない。
裏切られ、加害者家族として屈辱的な体験まで味合わせた夫を許すことはできない。しかし、刑務所行きになる夫には借金しか残らず、民事裁判を起こしても得られるものは何もないのだ。
仁美と2人の子どもはその後、生活保護を受けて暮らしている。