5G対応「iPhone12」にハイテク企業の期待高い訳 コロナや米中対立の逆風を吹き飛ばせるか
スマホなどに部品を供給するハイテク企業には今年、2つの逆風が吹いた。新型コロナウイルスの感染拡大で世界のスマホ市場は不振を余儀なくされた。米調査会社のIDCによると、世界の4―6月の出荷台数は前年割れとなった。在宅勤務や自宅学習によるパソコンや通信量増大に伴い、データセンター向けなどの需要増が支えとなったが、米政府によるファーウェイへの輸出規制がそこへ追い打ちをかけた。
英調査会社のオムディアの試算では、ファーウェイによる日本企業からの部品などの昨年の調達額は約1兆円。輸出規制のインパクトは大きい。今年は米規制をにらんだ在庫の積み増しもあって1兆1000億円程度と膨らむ見込みだが、来年は半減以下に縮みかねないという。
ソニーは需要の変調に対応するため、スマホのカメラに使うイメージセンサーの生産設備投資の抑制を決めた。8月の決算で、20年度までの3カ年の累積設備投資の計画を下方修正。会見した十時裕樹副社長は、21年度以降の計画も見直すと述べた。
半導体メモリ大手のキオクシアは、10月に予定していた東証への上場計画を延期した。要因の1つは、米国のファーウェイ規制強化が影を落としたことだった。
世界的に販売を伸ばすオッポやシャオミ<1810.HK>など、ファーウェイ以外の中国メーカーとの取り引きを増やすことで、ファーウェイの穴を埋めようとする動きもある。「短期的に売り上げが落ち込んだとしても、技術力に優位性があればいずれ取り返せる」と、ソニーの関係者は話す。
部品メーカーの営業努力に加え、iPhoneの販売が従来以上に膨らめば、「100%は無理でも、ファーウェイのロスをある程度はカバーできるのではないか」と、オムディアの南川明シニアディレクターは指摘する。
不透明要因も
懸念されるのは、世界のスマホ市場の潮流が低価格化に向かっていることだ。新型iPhoneの価格にもその兆候がみられ、調査会社フォーマルハウト・テクノ・ソリューションズの柏尾南壮ディレクターは、これまで付属していた電源アダプターなどが省かれたが「それでは補えないぐらい(値段が)抑えられた」と指摘。高速・大容量を特徴とする5Gは通信モジュールやプロセッサーなど部品コストの上昇が見込まれるが「部品メーカーも薄利を求められるのではないか」と語る。
そもそも、期待通りに新型iPhoneが売れないリスクもある。競合する米グーグルのOS「アンドロイド」を採用するスマホも機能を進化し続けており、5Gの対応はiPhoneに先んじた。
IDC Japanの菅原氏は、アップルには関連製品やサービスでユーザーを囲い込む「エコシステム」の強みがあると見る一方、「近年はカメラ性能や画面の解像度、ストレージ容量など、スペック上では上回るアンドロイドのハイエンド機も出てきている」と指摘する。
(平田紀之 編集:久保信博)
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら