だから豚肉価格は17年ぶりの高値になった 伝染病の拡大だけが原因ではない!?

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豚肉在庫の低水準の背景には、米国で牛肉の生産量が減少したことがある。

12年夏に米国で発生した大規模干ばつによって、穀物の生産量が激減。家畜用飼料の価格が上昇し、飼料代を抑えたい現地の畜産農家は屠畜量を増やした。この反動で、その後の牛肉生産量が減った。

牛の成育には2~3年かかるため、影響は今なお続いている。その結果、牛肉の代替として豚肉の需要が高まった。そこに昨年春、米国で初となるPEDの感染が確認され、全土へ拡大。これを受け、13年4月~14年2月の日本の米国からの豚肉輸入量は25万トンと、前年同期比で1割近い減少となった。

異変があったのは米国だけではない。国内でも、昨夏の猛暑の影響で種付け不良が頻発し、供給量の減少が予想されていた。そこに追い打ちをかけるように、PEDの感染が拡大。今回の相場高騰につながったとみられる。

じわり広がる卸売価格上昇の波紋

卸売価格の上昇は、豚肉などを主原料とするハムやソーセージにも影響を及ぼし始めている。日本ハム、伊藤ハムは7月1日からハム、ソーセージ、ハンバーグなど調理加工食品の納入価格の引き上げや、容量変更による実質的な値上げを発表した。値上げ幅は平均10%を予定している。

プリマハムも「値上げをせざるを得ない状況になっている」(前田茂樹・常務取締役)としており、値上げ方法について精査中だ。ハム・ソーセージメーカーは昨年夏も相場高騰を受け、8%程度の値上げを実施している。単純計算で、一昨年より2割近く納入価格が上がることになる。

さらに、豚肉の卸売価格上昇によって、今度は鶏肉に代替需要が発生。国産鶏肉の卸売価格も高値で推移し、肉全般が相場高となっている。

事態終息はいつになるのか。「豚の成育には5~6カ月かかるため、ほ乳豚減少による供給減は少なくとも半年ほど続きそう」(農水省動物衛生課の担当者)。消費増税後の節約志向も相まって、食卓に肉料理の並ぶ日が減ってしまうかもしれない。

「週刊東洋経済」2014年5月24日号<5月19日発売>掲載の「価格を読む」に加筆)

田嶌 ななみ 東洋経済 記者

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たじま ななみ / Nanami Tajima

2013年、東洋経済入社。食品業界・電機業界の担当記者を経て、2017年10月より東洋経済オンライン編集部所属。

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