在宅勤務で急浮上、「書斎」導入にあの手この手 「住む」と「働く」の両立へ、変わる住宅の機能
ところが、開発現場からは「できれば書斎は導入したくない」(大手デベロッパーのマンション商品企画担当者)。書斎という新たなスペースの確保は、昨今のマンション開発の傾向に逆行する動きだからだ。
土地代と建築費という原価高騰を受けて、マンション価格は上昇が続く。不動産経済研究所によれば、首都圏で発売されたマンションの平均価格は2009年の4535万円から、2019年には5980万円にまで約3割上昇した。その一方で家計の所得は伸び悩み、家計の懐は住宅価格の上昇に追いついていない。
マンション面積縮小の流れに逆行
マンション価格を抑える苦肉の策として、デベロッパー各社が打ち出したのが住戸面積の縮小だ。面積を削れば土地代や建築費が浮き、販売価格を下げることができる。その結果、一般的なファミリー向け住戸として、2000年代は80平方メートル台の4LDKが大量に供給されていたが、昨今は60平方メートル台の3LDKが主流だ。
コロナ禍がもたらした書斎需要は、こうした面積圧縮の潮流とぶつかる。日鉄興和不動産は、住戸内の洋室とは別に2~3畳の小部屋を設ける「モアトリエ」を提供している。元々は納戸やちょっとした趣味の部屋としての利用を想定していたが、在宅勤務の普及を受けて書斎としての活用も打ち出した。
このモアトリエ、元々は「ユトリエ」の名称で2012年から展開していた。当時の面積は「3畳」だったが、3畳を確保できる住戸が限られてきたため、いつしか「2~3畳」と幅を持たせるようになった。
住環境に支障をきたさないように書斎スペースを捻出するため、マンションの開発担当者は知恵を絞っている。三菱地所や三井不動産はリビングから、東急不動産は収納スペースから、野村不動産は洋室から面積を拝借する選択をしたといえる。
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