過眠症に苦しむ人を「薬規制」がなお悩ませる訳

モディオダールの処方厳格化ははたして妥当か

夜しっかり寝たのに昼間、急に眠くて仕方がなくなる症状に悩んでいる人がいる(写真:Taka/PIXTA)

「最初の記憶は小学校の移動教室のとき。ハッと目が覚めて、周りを見渡すと誰もいなくて。みんな別の教室に移動していたんです。小学生がそんなふうに昼間に寝ちゃうのって、ありえないですよね」

こう振り返るのは、ナルコレプシー患者で理学療法士の川崎俊さん(28歳)。中学生のとき、毎日起こる強い昼間の眠気を心配した両親とともに、東京都内の専門クリニックを受診。そこでナルコレプシーと診断された。

ナルコレプシーとは過眠症の1つで、「居眠り病」とも呼ばれる。日中の耐えがたい眠気を特徴とする中枢神経系の神経疾患だ。日本人の有病率は600人に1人。海外に比べて高く、10代で発症する例が多い。原因は、オレキシンという脳内で覚醒を維持するために必要な神経伝達物質の減少だ。

夜しっかり睡眠をとっていても昼間眠くなる

「中核となる症状は『昼間の強い眠気』と、『情動脱力発作(カタプレキシー)』です」

こう解説するのは、過眠症に詳しい関西電力病院睡眠関連疾患センター(大阪市福島区)センター長の立花直子さん。

「昼間の強い眠気は夜しっかり睡眠をとっていても生じ、一度眠くなると、本人の意思とは関係なく押し寄せます。試験中や仕事の商談中といった、緊張して“普通は眠らないような状況”でも眠ってしまいます」

情動脱力発作とは、突然起こる筋肉の脱力をいう。笑う、怒るといった情動や、「想定外の出来事に遭遇して驚く」など気持ちの大きな揺れが引き金となって、顔や体の力が抜ける。操り人形の糸が切れたかのごとく、崩れ落ちることもあるという。

このほか、寝る前に怖い幻覚をみる、金縛りに遭うといった症状も伴う。

過眠(夜間に十分な睡眠をとっても、日中に強い眠気が起こる)を伴う病気は、ナルコレプシー以外にもある。代表的なのが睡眠時無呼吸症候群や周期性四肢運動障害、ムズムズ脚症候群などで、睡眠の質が悪くなることで昼間に眠くなる。

あとは、脳に何らかの問題があって、昼間に眠くなったり、1日の睡眠時間が長くなったりする病気だ。ナルコレプシーはここに含まれ、ほかに特発性過眠症やクライネ・レビン症候群などがある。専門的にはこのグループを「過眠症」と呼ぶ。

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