上海に上陸したヤマト「宅急便」、夢はアジアの“黒猫”《中国を攻める》
「中国で物流革命を起こすんだ。中国の文化を一緒に変えるんだ」。上海の宅配合弁・雅瑪多(やまと)(中国)運輸の野田実董事兼会長は、研修生にこんな檄を毎日飛ばし続けている。
昨夏まで九州支社長をしていた野田氏に白羽の矢が立ったのは、野田氏が“歩く宅急便の歴史”だからだ。野田氏は入社1年目の冬、1976年1月の宅配便の誕生に立ち会い、以後、国内の宅配便一筋で生きてきた。その野田氏を、瀬戸社長は「30年かけて日本で完成させた宅急便を、3年で中国に根付かせてくれ。最後の一花を咲かせてくれ」と口説いた。昨夏のことだ。
運送屋に入社したつもりでいたから、海外勤務の指令に仰天したが、今では「一花と言わず二花も三花も咲かせる。中国の歴史に名を残すんだ」(野田氏)と目を輝かせる。それほど、万博を5月に控えた上海は希望に満ちている。宅配便の草創期の日本とはケタ違いの潜在需要の大きさ、急成長の可能性を野田氏は肌で感じている。
「BHナンバー」とマジョリティが決め手
そんな上海への進出のカギに、瀬戸社長は「BHナンバーとマジョリティ(過半出資)」を挙げる。
BHナンバーとは、上海の中心部を囲む内環状線の内側に入ることが許された商用トラックのナンバープレートのこと。BHがなければ中心部へのトラック配送はできない。
今回、ヤマトの上陸に合わせて、上海市はこれまで0・9トンだったトラックの積載上限を1・5トンに急きょ引き上げた。これでクール便の冷蔵庫が搭載できるようになった。さらに、「もう増やさない」と言っていたBHの枠を増やした。
雅瑪多の前身・上海巴士(バス)物流は230台のBH枠を持っていたが、今回新たに200台分を上海市から与えられた。当局が前言撤回したのは、万博を機に、快適な都市生活のための配送モデルを導入しようとしているからにほかならない。雅瑪多はその牽引役に選ばれた。
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