上海に上陸したヤマト「宅急便」、夢はアジアの“黒猫”《中国を攻める》
雅瑪多の出資比率はヤマトが65%、残り35%は上海金剛投資と上海久事が半分ずつ出資する。上海金剛投資は上海の物流企業向け投資会社、上海久事は上海市が100%出資する総合投資会社だ。
ヤマトは金剛投資と上海久事の2社合弁だった巴士物流の第三者増資に応じて35億円出資した後、巴士物流を雅瑪多に社名変更した。
瀬戸社長がマジョリティにこだわる背景には、台湾での苦い経験がある。さかのぼること10年前。ヤマトは台湾に宅配合弁・統一速達を設立し、日本同様のサービスを開始した。日本での同業・佐川急便や日本通運もほぼ同時に進出し、今では台湾の宅配市場は「人口1人当たりで日本と同等以上の取り扱い個数にまで成長した」(瀬戸社長)という。
だが統一速達の株は、台湾でセブン‐イレブンを展開する合弁相手・統一超商が7割を保有する。主導権は統一超商が握り、出資わずか1割のヤマトはノウハウ提供にとどまる。人口2300万人余の大市場を相手にしながら、出資比率が低いがゆえに、いくら台湾事業が拡大しても、ヤマトの連結売上高や営業利益は1円たりとも増えない。
瀬戸社長は「中国系の人は(宅配便を受け入れてくれるという意味で)大丈夫と確認できた」と言い、台湾での経験を前向きにとらえるが、台湾に宅配事業を根付かせた功績の大きさほどには、見合った果実を享受できていない現実があった。
“先輩”佐川の教訓 驚きの上海宅配事情
実は中国には“先輩”がいる。日本での宿敵・佐川急便を傘下に有するSGホールディングスだ。
住友商事と地元企業・大衆交通との3社で2002年に上海大衆佐川急便物流を設立。03年に上海で宅配便を開始し06年に黒字化、08年に累損を解消している。当初は地元の大衆交通が過半を出資していたが、現在の出資比率は佐川と住商が各37.5%、大衆交通が25%だ。
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