国が推進「オールジャパン鉄道輸出」悲惨な実態 円借款事業でも車両は海外メーカー製導入へ

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故障で使えないということになれば、メーカーがどこであれ日本が入れた車両であることに変わりはなく、言い逃れはできないだろう。最終的に日本が無償援助などでリハビリをすることになれば、結局高くつくのである。中国、韓国・インド、それにドイツがミャンマーへの鉄道支援を着々と進めている中で、これは大きな足かせにもなるだろう。

ミャンマー国鉄が近年増備した中国中車大連製の電気式ディーゼル機関車。22両が導入されうち10両がミャンマーでのノックダウン生産。後ろに連なるのは中国中車四方製の新型客車。優等列車の主役になっており、軌道改良後は時速100km走行も可能になる(写真:増田理人)

そもそもMRは当初、より安価でメンテナンスが容易な機関車+客車編成の導入を求めていた。とくに特急用車両ならば、費用対効果で見れば圧倒的に有利な方式である。しかし、今や日本では大型ディーゼル機関車も客車もほとんど生産していない。だから、日本側は電気式気動車の導入を半ば強引に提案した。しかし、それすらも導入できなかったのである。あまりにもだらしない話である。

簡単に言えば、日本は海外に鉄道車両を輸出できるほどの力がないのである。それを政府が認めないから歪が出るのだ。いっそのこと、「鉄道設備・信号輸出」にでも名前を変えたらどうだろうか。車両輸出に比べれば、まだ健闘している。すべてを「オールジャパン」でやるというのは非現実的だ。

日本は「身の丈」を考えよ

筆者は日本の車両メーカーに技術がないと言っているのではない。電気式気動車にしても国内需要の少なさでコストダウンは難しく、従来の液体式気動車もメンテナンス技術が失われつつある。大型ディーゼル機関車も然りだ。海外輸出を満たせるほどの国内需要がないのが最大の要因だと言いたいのだ。

現状、日本が海外向けに生産できるのは通勤電車と新幹線だけというのは業界の人間ならば誰しもが認めることだ。しかし、世界に日本の高性能な通勤電車、そして新幹線を必要とする国がどれほどあるのだろうか。

政府は世界に日本の技術を広めるなどという崇高な理想を語る前に、国内の疲弊しきった鉄道システムを再興させることのほうが先決ではないか。利益至上主義で長距離・夜行列車は消え、台風が来るたびに被災したローカル線が復活することなく消えていく世の中だ。これは途上国以下のレベルである。

「官民一体となった鉄道インフラ輸出」など、言わば「人口が減ったから外国人を呼べばいい」と同じ安直な発想だ。身の丈も考えずに「オールジャパン」「鉄道海外輸出」と振りかざす日本政府、国交省ならびに関係者は猛省すべきである。そして、JICAは国民の血税をつぎ込んだ揚げ句、誰も得をしない開発援助案件など実行すべきでない。

高木 聡 アジアン鉄道ライター

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たかぎ さとし / Satoshi Takagi

立教大学観光学部卒。JR線全線完乗後、活動の起点を東南アジアに移す。インドネシア在住。鉄道誌『鉄道ファン』での記事執筆、「ジャカルタの205系」「ジャカルタの東京地下鉄関連の車両」など。JABODETABEK COMMUTERS NEWS管理人。

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