前例がない問題でも答えを導き出せる「図頭」力 「AIに負けない本物の思考」の身に付け方

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私がよく使う強調の方法は3つあります。

まずは、大事そうな部分を太く囲んで目立たせること。

2つ目は、☆マークをつけることです。「おおよそ考えていることを紙の上に表現できたな〜」と思える頃、☆のマークを大事そうなところに描き足すのです。時には、重要性に応じて☆の数を変えることもあります。

3つ目は、☆の代わりに①、②、③……のように、順番も意識して番号をつけることです。これは話の流れを意識するときにも役立ちます。

○コツ5:周りに余白を残しながら描いていく

最後は、図を描き始める際、紙のどこから描き始めるべきか、です。

その答えは、「上下、左右に多少の余白を残して描く」です。なぜなら最初はビッグ・ピクチャー(全体像)を見通せていないことも多いので、最初の図の枠組みだけですべてをうまく捉えることが難しいからです。意識的に余白を残し、周囲をあけておくほうがベターなのです。ほとんどの場合、そのスペースは後で必要になります。

また、余白は新たな気づきのヒントにもなります。

余白を見るということは、何か抜けていないかと、図を「健全に疑ってみる」ことにつながり、新たな切り口や新たな要素を強制的に思いつくためのきっかけになるからです。余白が発想を刺激する。その余白に新たな着想が書かれていく。これは、余白が発想を広げることを支援し、新たな着想が図を豊かにしていくという好循環です。

「基礎」をマスターして、「図頭」を鍛えよう

本稿でご紹介したのは、図を描いて考える際の「基礎」ともいえるコツです。

ここで、「基礎」と呼んで、「基本」と呼んでいないのには訳があります。

基本には、簡単なこと、最初に学ぶべきこと、というニュアンスがあります。

それに対し、基礎には、「それをよりどころとしてものごとを成り立たせるもの」「全重量を支える土台」といった意味があり、根本をなすものを指しています。つまり、必ずしも簡単なわけではないのです(困ったことに)。

ただし、基礎を固めると、図で考えることのハードルが下がり、より複雑な図を描いて考えるといった応用も容易に可能になります。紙1枚に描かれるイメージ、それが深く考えることを助けてくれるのです。

ぜひ皆さんも、基礎をマスターして、図で考える習慣を身に付けてください。そうすると「図頭」が鍛えられ、答えのない問題、前例がない問題に対しても、きっと今まで以上に「より深く」「より本質的に」考えることが可能になるでしょう。

平井 孝志 筑波大学大学院ビジネスサイエンス系教授

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ひらい たかし / Takashi Hirai

東京大学教養学部卒、同大学院理学系研究科修士課程修了。マサチューセッツ工科大学(MIT)MBA。早稲田大学より博士(学術)。ベイン・アンド・カンパニー、デル(法人マーケティング・ディレクター)、スターバックス(経営企画部門長)、ローランド・ベルガー(執行役員シニアパートナー)などを経て現職。コンサルタント時代には、電機、消費財、自動車など幅広いクライアントにおいて、全社戦略、事業戦略、新規事業開発の立案および実施を支援。現在は、経営戦略、ロジカル・シンキングなどの企業研修も手掛ける。早稲田大学経営管理研究科客員教授、キトー社外取締役、三井倉庫ホールディングス社外取締役。著書は『本質思考』他多数。

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