台湾でユニクロが「国民的ブランド」になった訳 コロナ禍でも好調、台湾の市場シェア1位に

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ユニクロ台湾では「U管家」というアプリをリリースした。管家とは執事の意で、身長と体重などを入力するだけでユーザー1人ひとりの体型に合わせた商品が提案される。選んだ商品は実店舗でも購入できる。U管家によって、ボトムスの売り上げは前年同期比で10%増という成果をもたらした。

前出の范氏は、コロナ禍を経てアパレル小売業のeコマース化は必然であると話す。だがその最大のネックになるのが、リバースロジスティクス(逆物流)であると指摘する。リバースロジスティクスとは消費者から販売者へ商品が移動すること、つまり返品だ。范氏は、アパレル小売業の成長は、サイズ違いなどによる返品という問題をいかに解決するかだと話す。そして、ユニクロ台湾はリバースロジスティクス問題にもすでに取り組み始めている。

ミッションは台湾ビジネスのローカル化

ファーストリテイリングの幹部は全員、あるノートを持っていると言われている。創業者の柳井正氏が記したもので、『経営者になるためのノート』として出版されている。このノートでは経営者に必要な4つの力として、「変革する力」「儲ける力」「チームを作る力」「理想を追求する力」が登場する。黒瀬氏は「今の私は『理想を追求する力』が強いと思う」と話す。

ファーストリテイリングの幹部は柳井正氏が記したノートを全員持っている(写真:台湾「今周刊」蕭芃凱)

ユニクロは日本生まれのブランドだ。だが黒瀬氏によると、ユニクロ台湾の使命は台湾における真のローカル化であるという。「私たちは台湾人に愛されるブランドになるために努力する」と黒瀬氏は話す。「以前、(台湾の街を)妻が子どもを連れて歩いていたとき、突然大雨に襲われたことがあった。妻が困っていると見ず知らずの人がサッと傘を貸してくれたそうだ。私はこのような素晴らしい地のために、何ができるだろうかと考えている」。

黒瀬氏がCEOに就任して以来、ユニクロ台湾では人材戦略に変化が起きたという。現地採用が増え、日本本部から派遣されるの管理職は減少した。かつて柳井氏は「台湾は人材の宝庫だ」とコメントしたことがあるが、すでに40人の優秀な台湾人スタッフが海を越え、別の国の支店で働いている。「台湾の人材とともに世界へ進出し、世界市場で活躍したいと思っている」。これは黒瀬氏のもう1つの願いでもある。(台湾『今周刊』2020年8月19日)

台湾『今周刊』
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