台湾でユニクロが「国民的ブランド」になった訳 コロナ禍でも好調、台湾の市場シェア1位に
顧客の声とニーズに応えた結果、ユニクロ台湾は多くの熱烈なファンを獲得した。黒瀬氏は「私たちの業績のうち10%は、2%のコアなファンによるものだ。(この数字が)台湾のユニクロファンの存在を証明している」と話す。
台湾で商業分野の政策研究を行う商業発展研究院デジタルイノベーション・サービス・センターの范慧宜(はん・けいせん)主任は、ユニクロが台湾で支持を得た主な理由を「高いコストパフォーマンスと実用性、ブランドへの信頼感」と話す。
台湾人の日本ブランドに対する信頼は元々高い傾向にあるが、ユニクロはさらに商品の快適さと機能性、むやみに流行を追わない姿勢を打ち出した。
ビリー・アイリッシュとのコラボで大成功
2015年、ユニクロの創業者である柳井正氏は、eコマースでの収益を全体の30%に引き上げる目標を発表した。しかし、2020年2月現在でその割合は11%にとどまっている。コロナ禍で世界的にeコマースのニーズが高まる中、黒瀬氏は「コロナ禍で人々の生活圏は縮小し、買い物時間は短縮。インターネット通販を利用するようになった。重要になったのは、いかに素早く商品の情報を伝えられるかどうかだ」とみる。
ユニクロ台湾は2011年にオンラインストアを開設し、9年間でネット会員は500万人を突破した。会員の6割以上は30歳以下の若い世代で、人口比率でみると、台湾の若い世代のネット会員比率は日本よりも高い。「現在の最大のチャレンジは、より多くのお客様をオンラインストアに誘導すること。そのためにはお客様に早い段階で商品の情報を得てもらう必要があり、オンラインとリアルの連携が不可欠だ」と黒瀬氏は話す。
ユニクロ台湾は自社媒体やSNSなどを使って商品情報を広く伝えている。例えば、台風接近の前にはLINE公式アカウントでウインドブレーカーやレインコートの商品情報を積極的に紹介する。アプリでは会員の好みに合わせて正確なアプローチも行っている。どのアプローチもオンラインストアへの誘導つきである。
ネットとリアルの融合の成功例と言えば、2020年5月に驚異の売れ行きを見せたアメリカの人気歌手ビリー・アイリッシュとのコラボ商品だろう。商品をまずオンラインで先行販売し、売れ筋を見極め、SNSやインフルエンサーによる宣伝を行った。その結果、実店舗でもブームとも言える売れ行きを起こすことに成功した。
ネットショッピングで実際に商品に触れたり、試着できない問題については、よりリアルな買い物に近づけるために、店舗で「U LIVE」という生放送を開始した。U LIVEでは店長や講師によるコーディネートのアドバイスや新商品の紹介が行われている。
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