台湾でユニクロが「国民的ブランド」になった訳 コロナ禍でも好調、台湾の市場シェア1位に

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ユニクロの台湾進出は初年度から好調だった。2010年10月にオープンした1号店の業績は予想をはるかに超え、1年目から黒字化した。2年目が終わる頃には店舗数は17店舗にのぼった。

進出前からユニクロの名は台湾で知られており、その知名度が序盤の成功を導いたのかもしれない。だが世界全体をみると、アパレル小売業は失速している。華々しく進出してきた国際的な著名ブランドがひっそりと撤退したというニュースも珍しくない。

しかし、ユニクロは長年にわたり台湾のユーザーに愛され、トレンドの変化の影響も受けず、むしろ流れに逆らって成長するほどの勢いがある。

経営の核心にある「VOC」

黒瀬氏はその秘訣を「Voice of Customer(VOC)」、すなわち「顧客の声に耳を傾けること」にあると話す。VOCはユニクロの経営の核心だ。ユニクロ台湾では現場での調査、アンケート調査、スマートフォン会員のコメント、スマートフォン会員の購入記録、そしてプロによる市場調査の5つのルートを用い、毎月1万以上の顧客の声を集め、そのデータを分析することで消費者の好みや要求に応えている。

分析されたVOCは現場でどのように反映されているのだろうか。黒瀬氏は「以前、ある百貨店の担当者から『まだ熱いのに、なぜ9月からコートの販売を始めるのか』と聞かれたことがある」という。その答えは、「海外旅行を検討している顧客のニーズに応えるため」だった。というのも、台湾では毎年秋に中秋節と国慶節の大型連休があり、9~10月は国民的な旅行シーズンなのだ。日本をはじめ、より寒い地域に旅行へ行く人も多い。

さらに、黒瀬氏は「日本の季節商品が、必ずしも台湾に合うとは限らない」「各国における文化や気候が異なることと同じように、売れる商品も異なる」とも話す。売り場に陳列する商品は必ず現場の消費者の動向を見て調節し、台湾のニーズにあった商品を開発することもあるという。

具体的には、2015年に台湾で発売された「ウォームパンツ」シリーズは、台湾のバイクユーザーの声を受けて開発されたものだ。台湾の冬は湿気が多く、体にしみるような寒さが特徴となる。「最近、お客様からよく聞かれる声は、『夏場にユニクロのデニムをはくと暑い』という声だ」。この声を元に黒瀬氏は日本の本部と検討を重ね、台湾のユーザーのために、より柔らかく、より涼しい素材の商品の開発準備を進めている。

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