「今日俺」が興収50億円超え、邦画大健闘の背景 若年層が下支え、今後のカギは秋公開の作品群
ブームはいまだ続いていることから、興行収入100億円を超えるような大ヒット作になる可能性もある。『シン・エヴァンゲリオン劇場版』が延期となったなか、2020年一番の期待作であることは間違いない。
一方、課題は洋画だ。邦画とは客層が異なり、比較的年齢の高い層がターゲットの映画が多い。そうした世代は若者よりコロナウイルスに対する警戒心が強いため、コロナウイルスの感染リスクが完全には払拭されないなかでは動きは鈍くなっている。洋画はシリーズ続編などよほど注目度の高い作品が出てこないと観客を映画館に戻すのは難しいかもしれない。
そうしたなか期待されているのは、クリストファー・ノーラン監督の『TENET テネット』(9月18日公開)だ。映画館上映にこだわるノーラン監督の“強権”によって、劇場を開けられないアメリカより先に海外公開を強行する異例の大作だ。その世界的な話題性や、革新的な映像表現を伴うオリジナルの作品性によって、コアファン以外の幅広い層を動かすことができるか、洋画興行の行方を占ううえでも注目される。
コロナ禍のなか、ここから2020年の年間興行収入がどこまで盛り返せるかは気になるところだ。もちろん、コロナウイルスの流行状況に左右されることになるが、映画館としては安全性のアピールを続けつつ、通常の全席チケット販売に戻せるタイミングを探ることになる。ただ、このまま通常の興行が戻らない状況が続けば、年間興行収入は、5割程度まで回復できればいいほうだろう。
カギを握る洋画大作、1000億円まで盛り返せるか
2019年は過去最高となる年間興行収入2611億円を記録していたが、2020年はまず1000億円を超えるかどうかがひとつの目標になるだろう。未曾有の危機において、邦画がなんとか調子を取り戻しつつあるが、洋画が復調しなければやはり映画界は立ち行かない。年末・正月映画の編成はまだ見通せない部分もあるが、『TENET テネット』が起爆剤になり、そこから『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』(11月20日公開)や『トップガン マーヴェリック』(公開日未定)などにつなげていけるかがカギになるだろう。大高氏も「年間興行収入は洋画がどこまで盛り返せるかにかかっている」と見ている。
ただコロナ禍という特殊な状況において、数字ばかりにとらわれる必要はないだろう。危機に直面していた映画界が夏興行を経て得たことはたくさんある。
「映画館に赴くという行為を若い人たちがこの状況下で選択してくれているのはすごいこと。スクリーンで観る得難い体験が映画館の魅力としてあり、それを強く感じた若い層も多かったと思う。人間の行動や活動が限られているなか、厳しいのはどこの業界も同じ。それでも、映画館で映画を観てくれる多くの人がいることには本当に勇気づけられる。映画界は観客たちに感謝すべき。そして、もっともっと映画の魅力を発信し続けてほしい」(大高氏)
映画の価値を見直す機会にもつながっているといえるだろう。
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