民放が「ネット同時配信」でもたつく根本理由

日テレは「トライアルで開始」も、課題は山積

3月からNHKが始めたネット同時配信サービス「NHKプラス」(記者撮影)

「検討するべき材料は膨大だ」。あるキー局局員はそう語る。実際にどのような課題があるのか。関係者が口をそろえて語るのが「権利処理」と「コスト」の問題だ。

テレビ番組は音楽の著作権や特定の映像を使う際の使用権など、さまざまな「権利」で成り立っている。現行、日本の著作権法では地上波放送とネット同時配信が別物として扱われており、ネットで配信する場合にはそうした権利処理を改めて行う必要が出てくる。

例えば現在の地上波放送では、著作権者が不明な場合などで、相当な努力を行っても権利者と連絡が取れなければ、文化庁の裁定を受け放送することが可能だ。しかし現状、同時配信ではその仕組みを使うことができない。こうした事情で許諾が得られず、地上波放送では視聴できるが、ネット同時配信では視聴できない番組・場面も出てくると予想される。

さまざまなコスト増が懸念

すでにネット同時配信を行っているNHKでは、例えば権利処理の関係上ネット同時配信を行えない映像がある場合、その都度、ネット配信側で映像を停止し音声だけを配信するような形式を取っている。そうした場面が1番組で複数回発生するケースもあり、作業量はバカにならない。専属の人員を確保するのにはコストもかさむ。

さらに、芸能事務所の出演料や外部からの番組購入費、映画の放映料などが上乗せされる可能性もある。ある映画会社幹部は「仮にネット同時配信が行われるのであれば、現在の料金は地上波のみを対象にしているので、値上げする必要があるだろう」と語る。

実際NHKでは、設備費や放送権料、配信監視業務など同時配信に関わる費用として、総額54億円を令和2年度(2020年度)予算に計上した。これには初期費用も含まれてはいるが、2年目以降も相応の負担がかかってくることは明らかだ。

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