グノシーが「エンタメ一辺倒」から脱却図る理由 広告不正で曲がり角、「第二の創業」舞台裏とは
広告不正という目の前の課題にはひとまず対処したグノシーだが、社会的信頼の回復や再成長への道筋設計は道半ばだ。2人代表の新体制となり早速さまざまな手を打ち始めているが、中でも注力するのが、同社最大の特徴ともいえる「アルゴリズム」の変革だ。
アルゴリズムとは、アプリ上で表示する記事を各人の好みに最適化(パーソナライズ)するための仕組み。ユーザーが読む記事のジャンル、内容などを機械学習することで、例えば「テレビ番組への興味関心が強いAさんにはエンタメ系記事を、仕事関係の情報収集に注力しているBさんには経済記事を」という具合に判断していく。
ただ実態として、人々の関心を集めやすいのは芸能ゴシップなどのエンタメ記事である。竹谷社長も「ユーザーの読みたい記事を最優先すると、(グノシー上で表示するのも)どうしてもエンタメ記事が多くなる」と話す。その結果グノシーは業界内でも、全体のバランスを重視し政治・経済などの堅いニュースも積極掲載する競合と比べ「エンタメ色の強いアプリ」と言われるようになった。
浮上してきた新たな問題
一方で昨今は、検索サイトやSNS、ニュースアプリを巡ってフィルターバブル(ユーザーの意に沿わない情報や主張をアルゴリズムが遮断してしまう現象)やエコーチェンバー(閉鎖的コミュニティの中で自分と同意見の人々だけのやり取りが繰り返されることで、その意見が社会全体で正しいと誤認してしまう現象)などの問題も指摘される。
今後はこうした問題を助長するメディアへの広告出稿を控える広告主が増える可能性もあり、サービスの提供企業にとっても無視できない要素となりつつある。
こうした社会的な要請も踏まえ、グノシーも自社のアルゴリズム変更に踏み切った。詳細は明かしていないが、同社ではアルゴリズム設定に2つの軸を据えているという。 1つは、その人の興味関心に限らず「世間一般で注目されている・注目すべきニュース」、 2つ目は従来方針の延長である「その人の周辺で流行している情報」だ。こうしたロジックで政治・経済・社会などのニュースを織り交ぜることで、純粋にユーザーの好みだけに偏りすぎないラインナップを目指していく。
加えて「『エロ』と表現される、情報としてふさわしくないニュースが表示されないアルゴリズムに変更している」(同社広報)。今後も継続的に刷新していく予定だ。