米国のケニア「プラごみ押し付け」強引な手口 大手化学メーカーなどが貿易交渉に関与

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こうした動きが映し出しているのは、衰退の危機にさらされた石油関連業界の姿だ。コロナ禍で石油関連企業の収益は急悪化。気候変動により世界的な石油離れを強いられると危惧する同業界は、供給過多となった石油・ガスの新たな使い道を探そうと躍起になっている。風力や太陽光による発電はコスト的にますます手頃となり、化石燃料の使用削減を狙った政策の検討が各国で進む。

中国の輸入禁止で行き場を失う

プラスチックに活路を見いだした化石燃料業界は、過去10年でアメリカ国内の石油化学工場に2000億ドル(約21兆円)を超える金額を投じてきた。ところが、アメリカが消費するプラスチックはすでに途上国の16倍。使い捨て製品への反発もあり、アメリカでプラスチックの販売量を増やすのは難しくなっている。

貿易統計によると、アメリカは2019年、ケニアを含む96カ国に10億ポンド(約45万トン)を超える廃プラを輸出している。表向きはリサイクル用ということになっているが、廃プラにはリサイクルの極めて難しいものが大量に含まれ、最後にはプラごみとして川や海を漂うことになる。

中国がプラごみの輸入を原則禁止にしたのは2018年。輸出業者は新たな投棄場を探し求め、結果としてアフリカへの輸出量は2019年に前年の4倍を上回る規模となった。

アメリカ化学工業協会の広報担当ライアン・ボールドウィン氏は、同協会の提案は世界的な廃プラ問題に対応するものだと説明した。同協会の書簡は「世界は特にケニアなどの開発途上国に対して使用済みプラスチックを収集、分別、リサイクル、処理するインフラの開発を支援する必要がある」と述べている。この協会には、石油メジャーのエクソンモービル、シェブロン、シェル、化学大手のダウなどが名を連ねている。

交渉は初期段階にあり、交渉担当者が業界側の提案を受け入れたかどうかはまだ明らかになっていない。ただ業界は通常、貿易政策の形成に強力な発言力を持っており、企業ロビイストはこれまでにも似たような譲歩を勝ち取っている。

例えば、新たな自由貿易協定をめぐりアメリカがメキシコとカナダと行った2018年の交渉で化学・農薬メーカーは、メキシコとカナダによる業界の規制強化を難しくする条件の成立に向けてロビー活動を展開、狙いどおりの成果を勝ち取った。

一方、同交渉では、アメリカの食品企業からロビーイングを受けた交渉担当者がメキシコとカナダにジャンクフードの危険性を警告するラベル表示を制限するよう働きかけていたが、世間の激しい批判にさらされると計画を放棄した。

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