米国のケニア「プラごみ押し付け」強引な手口 大手化学メーカーなどが貿易交渉に関与
ケニアに対する提案は「まさに警戒すべき動きだ」と、超党派の農業・貿易政策研究所の上級弁護士で、トランプ政権とオバマ政権の両方で10年以上にわたり貿易交渉のアドバイザーを務めてきたシャロン・トリート氏は言う。同氏によれば、企業のロビイストは「非常に具体的な提案を頻繁に提示し、政府はそれに応じることなる」。
さらにアメリカ国内のプラスチック規制も、業界の提案によって困難となるおそれがある。貿易協定は双方の国に適用されるためだ。
ニューヨーク・タイムズはアメリカ通商代表部に取材を要請し、書面でも詳細な質問事項を送ったが返答はなかった。ケニア政府からも回答は得られなかった。
ケニアは昨年、諸外国と同様、廃プラの輸入を停止するという国際協定に署名したが、化学業界はこの協定に強く反対した。ニューヨーク・タイムズが確認した電子メールのやりとりからは、業界の利益代表者(その多くが貿易担当の元高官)が昨年、アメリカの交渉担当者と協力して、こうした規制を阻止しようとしていたことが明らかになっている。
ケニアは「いいカモ」にされる
アメリカ化学工業協会が4月28日付で通商代表部に送った書簡に示された業界のビジョンはこうだ。ケニアで伸展する港湾、鉄道、道路網は「アメリカとケニア間だけでなく、東アフリカおよびアフリカ大陸全体における化学製品の貿易拡大に資するものである」と、同協会のブリスワ氏は記した。
プラスチック産業のハブ(中心地)をアフリカに築くためには、ケニアとの貿易協定において、ケニアがプラスチックの製造と使用に対する規制措置を講じるのを阻み、同国が廃プラ輸入を続けられるようにしていかなくてはならない、とブリスワ氏は主張している。異様で強引な要求だ、と専門家らは指摘する。
こうした要求によって「ビニール袋やペットボトルに対するあらゆる禁止措置が文字どおり封じ込められる」おそれがあると話すのは、アメリカとスイスを拠点とする非政府組織、国際環境法センター(CIEL)のプラスチック専門家ジェーン・パットン氏だ。外国で「民主的に導入されたプラスチック規制政策を切り崩す」業界主導の取り組みが進んでいると言う。
ケニアのモンバサにあるキシワニ保護ネットワークの創設者ダニエル・マイナ氏は、この貿易交渉はパンデミックの経済的な影響が広がり、ケニアの足元がとりわけ不安定化してきたタイミングに重なったと語る。「アメリカがこのような貿易協定を押しつけてきたら、ケニアはいいカモにされるだけだ」。
(執筆:Hiroko Tabuchi記者、Michael Corkery記者、Carlos Mureithi記者)
(C)2020 The New York Times News Services
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