誤算が続く東芝の原子力事業は立ち直れるか 米国の原発新設案件が前進せず損失を計上

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事業性を疑われるサウス・テキサス・プロジェクトでは、いったい何が起きているのだろうか。

同プロジェクトは日本企業が海外で初めて取り組む原発新設案件。東芝は2008年に同プロジェクトの主契約者となり、翌年にはプラントの建設を含めたプロジェクト全体を一括受注することに成功。これを足がかりとして、海外新設案件を強化することを目指していた。

だが、2011年3月11日の東日本大震災により東京電力福島第一原子力発電所の原子炉がメルトダウンを起こしたことで、状況は急変。東芝によると、米原子力規制委員会(NRC)は2012年半ばに建設許可を出す見込みと説明していたというが、現在も許可を出していない。久保副社長は、「2016年1月にも許可が出る見込み。許可が下りれば、(今回計上した損失310億円のうち)大半は利益として戻ってくる」と話す。もちろん、そうなる可能性もあるが、NRCの許可がさらに延期される可能性も否定できない。原発建設に出資する肝心の投資家も決まっていない。

2015年3月期は4000億円を目指す

とはいえ、2015年3月期の決算見通しは暗いものではない。8日に明らかにした2015年3月期の営業利益見通しは3300億円。電子デバイス部門の営業利益が1800億円(前期比25%減)に落ち込む一方で、原発関連の損失がない電力・社会インフラ部門の営業利益は2.2倍の700億円を見込む。さらにテレビや白モノなどのライフスタイル部門が赤字を脱却することで、過去最高益を更新する計画だ。

しかも、この目標はさまざまなリスクを織り込んだ保守的な数字だという。「4000億円を目指しており、3300億円は最低限としてのコミットメントだ」(久保副社長)。

過去の営業利益実績を振り返ると2011年3月期2402億円、2012年3月期2066億円、2013年3月期1943億円と減益が続いていた。そこから反転し、2014年3月期は2908億円。そして今度は4000億円を目指すわけであり、停滞期を脱し収益拡大期を迎えているのは間違いない。

残された大きな課題は、原子力事業が、依然として同社を揺さ振る大きなリスク要因になっていること。電力・社会インフラ部門は、原発に過度に頼らず、成長事業を複線的に備えていく必要がある。

富田 頌子 東洋経済 記者

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とみた しょうこ / Shoko Tomita

銀行を経て2014年東洋経済新報社入社。電機・家電量販店業界の担当記者や『週刊東洋経済』編集部を経験した後、「東洋経済オンライン」編集部へ。

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