数字で見ると明らか「アベノミクス」残念な実績 在任期間中、日本経済はどれだけ「成長」したか

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ちょうどそれが、安倍首相の就任後の5四半期、つまり2012年の10〜12月期から2014年1〜3月期に重なったのだ。その後安倍首相は消費増税を行い、2019年10月には再度消費増税を行った。どちらの増税時にも、景気は緩やかに後退した。

もし日本経済が根本的に健全であったなら、そうした景気後退は取るに足らない一時的な現象にとどまっていただろう。しかし長期的に見れば、その長期を具体的にどの長さと考えても、アベノミクスでは日本の潜在的な成長率を押し上げることができなかった。

その結果、2014年1〜3月期から2020年1〜3月期(新型コロナウイルス感染症の悪影響が見られるようになる前)の6年間のGDPの成長率は、合計で1.8%にとどまった。つまりこの6年間では、GDPは安倍首相が1年で達成すると約束した2%の成長すら達成できなかったのだ。

個人消費はコロナ抜きでも低迷

加えて、人々の生活水準への悪影響についても触れなければならない。物価調整後の個人消費は、安倍首相の就任時と比較して、2020年1〜3月期には0.5%低下していた。繰り返しになるが、これは新型コロナウイルス感染症による経済への悪影響が見られるようになる前の時期の数字である。

いわゆる失われた10年間、日本の消費がこれほど長期間にわたって低下したことはなかった。これは、人々に支出意欲がなかったからではない。増税や実質賃金の低下によって、人々の収入が減ってしまったからである。安倍首相政権の8年間で、実質賃金は労働者1人当たり3.5%も低下したのだ。

「3本の矢」の効果はどうだったか。安倍首相が真剣に取り組んだ矢は1本目、つまり日本銀行の黒田東彦総裁の「自分が飛べるかどうかに疑念を持った瞬間、一生飛べなくなってしまう」というピーターパン的理論に基づいた金融刺激策のみであった。

さらに奇妙なことに、安倍首相と黒田総裁は、その命題の裏、つまり自分が飛べると信じるだけで飛べる、が真であるかのように振る舞った。2人は、成長を阻害している最大の原因は経済への信用のなさとデフレであり、したがってデフレに打ち勝つことができれば経済成長が復活するだろう、と信じていたのである。

次ページわずか2年で2%を達成できるとしていたが…
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