「両院議員総会で総裁選出」は筋が悪すぎる理由 自民党幹部に欠けている総裁選びの重大論点

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では、なぜ自民党は両院議員総会にこだわるのか。巷で言われているように、自民党幹部は石破氏に総裁にならせたくないからではないか。石破氏が政権批判を繰り返してきたことがしこりとなっていると見る向きもある。

しかし、各種の世論調査でトップに立っているのは石破氏だ。もし両院議員総会方式を選択し、石破氏を抑え込み、菅氏、岸田氏のいずれかを選んだ場合の総裁の末路は明らかであろう。

菅氏であれば、コロナ対策の前面に立ってきた責任を追及される。アベノマスク問題、PCR検査体制を整備できないという問題、政府の対応が後手後手に回ったという問題、休業要請を出した業界に補償を行わない問題など、突っ込みどころは満載である。

岸田氏であれば、特別給付金の対象を1世帯当たり30万円としていた案を撤回せざるをえなくなり、政策決定の混乱を招いた点を追求されるだろう。

衆議院の任期満了は来年秋で、今後1年の間に必ず総選挙が実施される。そこでは、首相の政策・リーダーシップが問われることになる。

菅氏・岸田氏とも、安倍政権の政策継承を掲げているようである。それではかえって国民がそっぽを向いてしまう。なぜなら、アベノミクスは当初数年間にかぎると多少の成果を上げたようにみえたが、コロナ禍によってその効果も大半が剥げ落ちてしまったからだ。

国民は今、自分の職場はつぶれずに生き残れるのか、家族を路頭に迷わすことなく生きていけるのかと不安を感じている。それなのに、成果の出なかった「アベノミクスを継承します」と言った瞬間、国民は白けてしまうだろう。

忘れてはならない、もう1つの論点

そもそも、次期総裁・次期首相には、当面のコロナ対策は別として、長期的にはもっと大きな役割がある。

地盤沈下する日本経済をどう立て直していくのか、IT化の遅れをどのように取り戻していくのか、GDP比で先進国最悪の政府債務をどう解消していくのか、少子高齢化問題をどのように解決していくのか、米中対立の中で日本の立ち位置をどこに置くのか、などの問題に対処していくことである。

これらの重要問題について、党員投票方式の総裁選で各候補が論戦を展開していくことは、日本の将来にとって最も重要である。それに1カ月がかかったとしても、適切な総裁イコール次期首相を選ぶことのほうがはるかに大事だ。

自民党にとっても数合わせの総裁を選び、国民の支持を失って次の総選挙で惨敗するよりも、大きな利益のあることである。自民党幹部には党員投票方式の総裁選の重要性を再認識し、両院議員総会での短絡的な数合わせの総裁選から、早急に頭を切り替えてもらいたい。

植田 統 国際経営コンサルタント、弁護士、名古屋商科大学経営大学院(MBA)教授

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うえだ おさむ / Osamu Ueda

1957年東京都生まれ。東京大学法学部を卒後、東京銀行(現・三菱UFJ銀行)入行。ダートマス大学エイモスタックスクールにてMBA取得。その後、外資系コンサルティング会社ブーズ・アレン・アンド・ハミルトン(現PWCストラテジー)を経て、外資系データベース会社レクシスネクシス・ジャパン代表取締役社長。そのかたわら大学ロースクール夜間コースに通い司法試験合格。外資系企業再生コンサルティング会社アリックスパートナーズでJAL、ライブドアの再生に携わる。2010年弁護士開業。14年に独立し、青山東京法律事務所を開設。 近著は『2040年 「仕事とキャリア」年表』(三笠書房)。

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