「両院議員総会で総裁選出」は筋が悪すぎる理由 自民党幹部に欠けている総裁選びの重大論点

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両院議員総会で選出された総裁は、2000年以降、3人いる。

1人目は、2000年の森喜朗氏。小渕恵三首相が脳梗塞で入院したため、政権幹部の話し合いによって決まり、両院議員総会で無投票選出された。

次は、2007年の福田康夫氏。第1次安倍政権の首相辞任を受けて、選出された。

3人目が、2008年に福田首相の突然の辞任を受けた、麻生太郎氏である。

いずれもほぼ1年の短命の政権。森、麻生両氏は首相になってから失言が多く、急速に国民の支持を失った。福田氏は失言こそなかったものの、「福田では選挙を戦えない」という空気が党内に生まれ、1年経つと辞任を表明した。

なぜ、両院議員総会で選出された総裁は短命に終わってしまうのか。その理由は、いくつか考えられる。

第1に、正式な党員による選挙を経ていないために、総裁・首相としての適格性についての審査が十分に行われていないことだ。森、麻生両氏に失言が多かったのは、その結果ではないか。

第2に、派閥の数合わせで選出されるため、国民の支持基盤がないこと。実際に、森氏は総選挙で惨敗。福田氏は「福田首相では選挙は戦えない」という声が広まり辞任した。

麻生氏に至っては、福田氏の代わりに選挙の顔となるべく首相になったにもかかわらず、総選挙で181議席を失い、民主党に政権を譲り渡すという最悪の結果を残した。

両院議員総会は自民党にとって鬼門

こうして見てくると、両院議員総会による総裁指名は自民党にとって鬼門であると結論づけることができる。にもかかわらず、両院議員総会で次期総裁を選ぶ必要があるのか。

自民党の言い分は、コロナ対応で政治空白を作ってはならないということだろう。しかし、これは本当なのだろうか。

安倍首相が辞任会見で語った内容によれば、コロナ第2波はピークアウトに転じ、秋冬へ向けた対策も用意したという。安倍首相は完全に執務不能になったわけではない。

コロナ対策が始まってから安倍首相は表に出ず、菅官房長官の下、加藤勝信厚労相、西村康稔経済再生担当相を前面に立てて対策を行ってきたのだから、当面この体制でしのぐことができる。「党員選挙をやるには時間がない」という言い訳は成り立たない。

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