続々登場、「電気式気動車」は電車か気動車か 動力エネルギーの多様化で新型車両が百花繚乱

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JR九州が若松線に続いて香椎線に導入した蓄電池電車のBEC819系DENCHA(撮影:久保田 敦)
鉄道ジャーナル社の協力を得て、『鉄道ジャーナル』2020年10月号「JR東日本のNEW ENERGY TRAIN」を再構成した記事を掲載します。

非電化線区向けの新たな車両のラインナップは「(液体式)気動車」と一つにくくられていたものが、「ディーゼル・蓄電池ハイブリッド車」「蓄電池電車」「電気式気動車」、さらに水素を燃料とする「燃料電池車両」も考えられ、実に多様になった。JR東日本は、運転エネルギーの多様化を目指して取り組む積極策と言う。複雑化しすぎるデメリットはないのかとの疑念も湧く。しかし、この様子には昨今の気動車事情の下で確とした1つの方向がある。

その根本にあるのは、独特の機械装置の排除である。日本鉄道車両工業会が明らかにする近年の鉄道車両の国内生産実績において、気動車生産の両数は2011年度8両、2015年度67両、ある程度の置き換え需要があった2019年度ですら106両。このような数字ではもはや産業として成り立つ状況にない。したがって生産の引き受け手が限られるようになり、欲しい時に手に入らない事態も起こる。

エンジン自体は今も非電化線区で最も廉価な動力として不可欠であり、自動車や船舶等、多用途に使われるものを鉄道用にアレンジして供給される。そこで、それより下流のシステムを電車化する方向となった。昨今、自動車まで電動化に向かったのは、最も効率的エネルギーであるからだ。まずは自動車界の状況も鑑みてディーゼル・蓄電池ハイブリッド車として実現し、変速機をなくした。

蓄電池搭載でエンジンも不要に

一方、そこで得た蓄電池の知見を活かしたのが、蓄電池電車である。しかし、蓄電池は容量が限られるので、やみくもに距離を走らせることはできない。数を搭載するにもスペースや重量の制約がある。そのため、非電化区間の距離がさほどでなく、かつ電化区間との直通運転という条件が付く。限定的ではあるが、この高いハードルをクリアできればエンジンをも取り払うことができる。

また、現状の蓄電池搭載車両は高価というネックを抱えている。JR東日本によると、製造両数や線区の特状を踏まえた仕様があるので一概には言えないとしながらも、一般的な気動車に対してハイブリッド車両の価格は1.5倍程度とのこと。さらに多くの蓄電池を搭載する蓄電池電車になると、なおさら差は広がる。蓄電池の価格に加え、主回路はそれぞれの特殊設計であるため、量産効果を期待できる数ではない。

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