世界的猛暑、「異常気象」が鉄道に及ぼす脅威 開業時は想定できなかった気候変動で土砂崩れ
ネットワーク・レールは線路の歪みを含む異常をいち早く検知するため、英国版「ドクターイエロー」といえる検測車両を走らせている。皮肉にも、今回脱線を起こした「インターシティ125」をベースに造られたもので、黄色1色の外観から「フライング・バナナ」の愛称がある。
「フライング・バナナ」は軌道検測装置をはじめとする最新の検査用機器、高性能カメラを搭載しているのが自慢で、全国の上下線合わせて累計3万2000kmに及ぶ軌道のチェックを担っている。年間の走行距離は18万4000kmに及ぶという。
だが、気候変動による鉄道インフラへの影響は、高温による線路の変形のほか、今回のスコットランドの事故のような大雨による土砂崩れ、河川の増水による橋の流出などもある。さらに、以前はイギリスでは経験することがなかった台風のような大型低気圧による被害も出ている。
2014年には、イングランド西部デボン州の沿岸で、大型低気圧による嵐で高波が堤防を大きく越え、線路が路盤ごとさらわれたケースがあった。地盤がなくなり、レールと枕木が宙に浮くという痛ましい状況は、英国の鉄道インフラが受けた気候変動による最大の被害の一つとして多くの人々が記憶している。
鉄道は温暖化を止められる?
日本でもこの7月、豪雨により全国各地、とくに九州の鉄道が大きな被害を受けた。九州の鉄道はここ数年、毎年のように豪雨被害による不通が各線で発生している。また、昨年10月には過去最大級といわれた台風19号により、北陸新幹線の車両基地が水没したり、各地の鉄道が寸断されたりするなど甚大な被害が出た。
こういった自然災害による鉄道への被害の多発は、気候変動による異常気象の影響といえるだろう。被害の復旧に毎年のように苦労している線区も少なくない。だが、災害に備えて古い鉄道インフラのすべてを造り直すことは困難だ。
一方で、スコットレールのハインズ社長は「鉄道は環境に優しい交通機関であり、鉄道業界は気候変動という危機的状況がビジネスチャンスにもつながると捉えるべきだ」と訴えている。欧州では環境意識の高まりにより、航空から鉄道へのシフトも起きている。対症療法的な対応だけでなく、そもそもの原因である温暖化防止へ舵を切ることは難しいだろうか。
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