世界的猛暑、「異常気象」が鉄道に及ぼす脅威

開業時は想定できなかった気候変動で土砂崩れ

英国の鉄道インフラの多くは「ビクトリア朝時代」、つまり150年以上前に造られたものだ。当時は今よりもずっと気温が低かったことから、多くの専門家たちは気温上昇を含む異常気象が鉄道インフラの破壊に繋がっていることを認めている。

今回の事故のような土砂崩れの発生はもはや珍しいことではない。英BBCは「気候変動で、豪雨による土砂災害が今後さらに頻繁に起こるだろう」との見方を示している。

英国はこの数年、明らかに異常な高温や大雨などに見舞われている。スコットランドの事故当日まで、ロンドンを含む英国南部では気温34度以上の熱波の日々が5日間続き、60年ぶりの暑さとなった。ロンドンなどイングランドに高気圧が居座ったことで、スコットランド上空の前線が動けなくなり長時間にわたって雨を降らせた結果、今回の事故に繋がったといえるだろう。

高温対策に5億円を投入

今回事故を起こした列車の運行会社、スコットレールのアレックス・ハインズ社長は昨年、「この国の鉄道はこれ以上気候変動に対処できない」「気温上昇への対策を図る投資を行うべきだ」と警告を発していた。

ハインズ社長によると、「軌道建設時の気温限界はスコットランドでは35度、レールの金属そのもののテストは気温28度が最高という基準で行っている」と指摘。気候変動によりこれらの基準よりも気温が上がってしまったため、2018年の夏にはスコットランド全体で1000本の列車を止めなければならなかったという。翌2019年の夏はさらに気温が高かったが、400万ポンド(約5億5000万円)を投じて軌道の耐久力強化を行ったことから、減便は200本で済んだ。

高温対策としてレールを白く塗るネットワーク・レールの職員(写真:Network Rail)

一方、同年7月下旬はロンドンで記録的な猛暑となり、鉄道各線は高温によりレールや架線が変形する恐れから平常時よりスピードを落としたり、列車を間引きしたりしたことで運行が混乱した。地下鉄も、一部を除いて駅も車内も冷房が入っていないうえ、地上を走る鉄道同様にインフラも古く、気温上昇による影響が課題となっている。

英国の鉄道インフラを管理するネットワーク・レールは高温対策として、レールの温度監視の強化や、レールを白く塗って温度の上昇を抑えるなどの施策を講じている。ネットワーク・レールによると、直射日光に照らされたレールの温度は気温より20度高くなるが、白く塗ることで5~10度低くなるという。

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