1980年代のパリ、ロンドン「猛烈な暑さ」の記憶 真夏に初めて出かけた彼の地で浴びた洗礼
欧州の夏で思い起こされる悪夢
猛暑が続いている。毎日、ほんとうに暑い! 現代病に犯されたヤワな身体は、とても冷房なしでは過ごせない。もし、停電して冷房が停まったらどうしようって、けっこう真剣に考えたりする。僕も家内も暑さにはからきし弱いので……。
だから、わが家の旅は冬に集中している。夏の旅はしたことがない。夏は「家でじっとしている」だけ。昔からだ。でも、仕事の旅は季節を選べない。猛暑に耐えて旅することも受け容れなければならない。
そんなことで大変な思いをした旅があった。行き先はパリとロンドン。1980年代半ば頃だったと思う。ある雑誌から「パリ/ロンドン、夏の散策……」みたいなテーマの仕事を頼まれた。「写真と文……すべてお任せ」の取材依頼だった。
僕は引き受けた。夏の欧州は好きではなかったが、まあ「仕事だから」引き受けた。「旅のお世話に編集者を同行させます」とのことだったが、丁重にお断りした。1人旅のほうが気楽だし、自由度が高いからだ。
飛行機とホテルの手配だけを頼んで、あとはすべて1人でやることに。で、8月初旬だったと思うが、まずパリに飛んだ。「パリは暑い」という情報がなんとなく耳に届いていたが、とくに気にはならなかった。当時のパリ……欧州の夏は過ごしやすいと思い込んでいたからだ。
ところが、パリに着いて驚いた。猛烈に暑い。おまけに湿気もひどい。東京にも勝るほどの不快な暑さだった。最近、欧州の異常な猛暑がニュース等で伝えられることが多くなった。昨年はフランスで45度!!
史上最高の温度が記録された。今年も、パリで7月末に42.6度! 72年ぶりの記録更新とのこと。でも、35年ほど前のパリ行きに際して、「猛暑」の意識はまるでなかった。「少し暑くても、カラッとしていて過ごしやすい暑さ」といったイメージしかなかった。