1980年代のパリ、ロンドン「猛烈な暑さ」の記憶 真夏に初めて出かけた彼の地で浴びた洗礼

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そんなイメージとは真逆……不快さ満点の猛暑の出迎えに、暑さ嫌いの僕は出だしから萎えた。「夏の散策……」という取材テーマを考えると、心は一層重くなった。

そんな僕に追い打ちをかけ、決定的ダメージを与えたのはホテル。編集部が予約してくれていたホテルには「冷房がなかった!」のだ。そのホテルはいわゆる5つ星。老舗の高級ホテルだった。

普通なら編集部には感謝すべき選択なのだが、「冷房なし」がわかった瞬間、愕然とし、無性に腹が立った。今では5つ星ホテルに冷房がないなんて信じられないこと。だが、当時の欧州では、とくに珍しくもなかった。

それを知りながら、編集部に念を押さなかったのは「僕のミス」、と言い聞かせていら立ちを抑えた。でも、部屋に入ると、思ったより暑くなかった。年季の入った、分厚い石造りによる断熱効果なのだろう。少しホッとした。

夜、寝つけるか心配だったが、飛行機での寝不足も手伝ってか、無事寝つけた。翌日も猛暑。コンシェルジュに予報を聞いたら、「ここ数日は猛暑」とのこと。でも、出かけざるをえない。散策にはまったく不向きな猛暑だが、仕事は放り出せない。

あらかじめ決めておいた散策ポイントには地下鉄で向かった。パリの移動にはなにより地下鉄がいちばん。仕事でもプライベートでも、パリの移動はほとんど地下鉄を使う。ただし、地下鉄にも冷房はない。

写真を撮りながら、思いついたこと、感じたことをメモしながら歩いた。少しでも汗を抑えようとゆっくり歩いたが、噴き出す汗を抑えるのは無理だった。

で、汗を止め、一息つこうと店やカフェに入るのだが、その度に悪態をついて出てくることになる。そう「冷房がない」のだ。数軒目の店で英語を話してくれる人がいた。

そこで、「冷房なくて大丈夫?」と聞いた。すると、「ほんの1~2週間ガマンすれば冷房なんていらない」と。でも、「今週は暑すぎる。これが続くときついね」ともつけ加えた。

そうか、1~2週間ガマンすればいいのか……。なんとなく頷けもしたが、旅行者として「大いに不満」な気持ちに変わりはなかった。とくにサービス業で「客にガマンを強いる」のは受け容れられなかった。

「マクドナルド」はしっかり冷房が効いていた

アメリカなら、アリゾナとかニューメキシコの小さな町、LAダウンタウンの安モーテル……どこだってキンキンに冷房は効いている。ちょっと「やりすぎ!!」と思うくらいに。

そんなことを思いだしていたとき、ふと気づいたことがあった。そうだ、「アメリカ資本系の店に行けば冷房はあるはず」だと。

そして、飛び込んだのが「マクドナルド」。大正解だった。アメリカほどキンキンではなかったが、しっかり冷房が効いていた。

以後、朝食とランチはマクドナルドに通った。パリ取材が終わった後、ロンドンに向かった。ロンドン散策は、パリとは趣向を変え、「クルマでの散策」ということになっていた。

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